1994 Fiscal Year Annual Research Report
アルカリ金属及び3d遷移金属コンプトンプロファイルにおける電子相関効果
Project/Area Number |
06640491
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
久保 康則 日本大学, 文理学部, 助教授 (60117497)
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Keywords | 電子構造 / フェルミ面 / 運動量分布 / コンプトンプロファイル / 電子相関 / 局所密度近似 |
Research Abstract |
局所密度近似(LDA)による束縛性の強い電子状態の記述の欠点を補う方向として自己相互作用補正(SIC)の効果を調べた。電子系は絶縁体ダイアモンド、半導体Si、貴金属Cuを対象とした。SICの評価は各単位胞内の角運動量量子数で区別される軌道のみに行う近似を用いた。この方法は以前、絶縁体、半導体のエネルギーギャップの検討に用いられ有効性が指摘されている。まず、FLAPW法によりLDA内で電子状態の計算を行い、コンプトンプロファイル(CP)を求め実験値と比較する。さらに、SICを取り込んだ電子状態の計算をFLAPW法で行い、CPを求めた。これらLDA-CPとSIC-CPと実験値との比較から、これら電子系へのSICの効果を吟味した。 ダイアモンド、SiにSICを考慮した場合、それらのエネルギーギャップはLDAでの結果にくらべ両者にたいしかなりの改良が見られる。しかし、CPへのSICの効果はダイヤモンドの場合には有効に作用するが、Siの場合には小さいことがわかった。この結果は1994年日本物理学会秋の分科会で発表した。一方、Cuの場合はLDAでのd-軌道の記述が良くないことが光電子分光の測定値との比較から指摘されている。すなわち、LDAで求めたd-バンドは拡がりすぎている。これにSICを取り込むと、d-バンドは狭くなるが、その効果がCPにどのように反映するかは興味が持たれる。実際、SIC-CPはLDA-CPと実験値の不一致を半分程度改良することがわかった。この結果は1994年日本物理学会年会、国際会議(SAGAMORE-XI“charge,spin and momentum densities",Workshop on Density Matrices;Brest, France:August(1994)で発表した。 電子状態の計算において、LDAを越える第一ステップとして電子相関の効果をGWAで取り込むプログラムを現在開発中である。
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