1994 Fiscal Year Annual Research Report
キレート樹脂を用いる天然水中のバナジウム(IV),(V)の現場型自動分析法の開発
Project/Area Number |
06640782
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中山 英一郎 京都大学, 理学部, 助手 (50108982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柄谷 肇 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (10169659)
杉山 雅人 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (10179179)
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Keywords | バナジウム / キレート樹脂 / 酸化還元状態 / 淡水 / 海水 / 自動分析 |
Research Abstract |
まず、アセチルアセトン系(MAF-AA)と8-キノリノール系(MAF-8HQ)の2種類のキレート樹脂を用いたバナジウム(IV)(V)の分離濃縮法を開発した。オルトケイ酸エチルを水-エタノール混合溶媒中で、塩酸、フッ化水素酸によって加水分解してさらに熱処理を施して得られるゲル状ガラス粒子は、部分的にシラノール基を置換して結合しているフッ素によって、強固な化学結合型金属キレート樹脂をつくるのに適している(このゲル状ガラス粒子を含フッ素メタルアルコキシドガラスの意味でMAFと呼ぶ)。このゲル状ガラス粒子にアセチルアセトンを修飾した樹脂(MAF-AA)は、pH2.2〜3.8の広い範囲において、バナジウムの5価のみ補集することを新たに見いだした。また、8-、キノリノールを修飾した樹脂(MAF-8HQ)は、pH2.8以上でバナジウム(IV)(V)を同時に捕集する。このことを基礎として、これらの樹脂を充填したカラムと定量ポンプ、電磁バルブ、オートサンプラー等からなる自動分離濃縮容離システムを開発した。次に、この分離システムと、ビンドシェドラ-スグリーンロイコ塩基(BGL)を用いる接触分析法を組み合せ、自動定量システムを開発した。このBGL-臭素酸カリウム系のフロー接触分析法はすでに報告されているものであるが、ほかの金属イオン(特に鉄)などによって妨害されることが知られている。しかし、これらの妨害物質は樹脂上にバナジウムを濃縮する際にほとんど捕集されないので妨害を除去することが可能となった。操作手順は次の通りである。0.4μmヌクレポアフィルターで濾過したサンプルを毎分3mlで導入する。この過程でpH2.8のバッファと混ぜ合わさり、MAF-AA,MAF-8HQの順に導入され、バナジウム(IV)(V)が別々に捕集される。これを塩酸で溶離し検出部に導入する。サンプル量12mlでバナジウム(IV),(V)とも0.05〜15nMの範囲で測定が可能となった。この装置を用いて、天然水を分析するための基礎として、まず、純水、湖水(琵琶湖水)、海水(外洋水)中におけるバナジウムの酸化還元の挙動を検討した。バナジウム(V)は純水中では全pH領域で安定に存在したが、湖水、海水中ではpH2以下で共存有機物によって徐々に4価に還元された、バナジウム(IV)は純水、湖水、海水中いずれにおいてもpH5以上で5価に酸化され、通常のpH7〜8の湖水、海水中では純水中よりはやや遅いが非常に速やかに5価となった。これらの事実は一般的な湖水、海水中で4価のバナジウムが存在する可能性が低いこと、また通常よく行われるように試料溶液を保存の目的で酸性にするとバナジウム(V)が還元され、あたかも4価として存在するように見える危険性のあることを示している。
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