1995 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルの繁殖構造と地域分化に関する集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
06640815
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川本 芳 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (00177750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 啓久 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (10128308)
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Keywords | 遺伝的変異 / ミトコンドリアDNA / 地域個体群 / 東日本 / 地域分化 / 遺伝標識 / 電気泳動法 / 群分裂 |
Research Abstract |
本年度はミトコンドリアDNAの地域変異を集中的に調査した。東北、関東、中部地方のニホンザル生息地24地点由来の計70個体の比較を行った。6塩基を認識する制限酵素28種類、7塩基を認識する制限酵素3種類を用いて血液ないしは皮膚から調製したDNAの切断パターンを電気泳動法で比較し、ミトコンドリアDNA変異の地理的分布にみられる特徴、地域個体群内の変異性、地域個体群間の分化について検討した。 この結果、使用した31種類中19の制限酵素で個体変異が検出され、70個体は14種類のミトコンドリアDNAタイプに分類できた。一般に地点内および地域個体群内では個体変異が少なく、変異性レベルが小さい。これは、群れが少数の母系か血縁性の高い家系で構成されること、群分裂が母系を単位として起こることを反映した結果だと考えられる。 一方、14種類のミトコンドリアDNAタイプは構造の類似性から2グループに大別できた。両グループの変異間には多数の塩基置換があり、東日本には母系の起源の大きく異なる2系統のニホンザルが分布すると予想された。ミトコンドリアDNA変異の地理的分布の性質は調査した地方により異なっており、地域分化の傾向は関東地方で顕著であった。また、東北地方に出現するミトコンドリアDNA変異は関東地方の一部地域のものと同じか、構造的に近いものと判定された。この原因としては、最終氷期以後、植生変化とともにニホンザルの分布地域が東日本で急速に拡大した可能性が考えられる。 上記のミトコンドリアDNAに関する調査に加え、ランダムプライマーを用いたPCRによる遺伝的変異の検索についても、有効なプライマーを選別することができた。また、染色体変異の検索のためには各地からの試料を現在精力的に収集している。実施計画の最終年度にあたる次年度は、これらの遺伝標識を用いた野生集団の分析を進め、ニホンザルの繁殖構造と地域分化に関する総合的な検討と、結果の公表を目指す。
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Research Products
(2 results)