1996 Fiscal Year Annual Research Report
ラット海馬の長期増強を誘発した単一ニューロンに特異的な遺伝子のクローニング
Project/Area Number |
06640890
|
Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
丸山 敬 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (30211577)
|
Keywords | 長期増強 / 神経可塑性 / basic-helix-loop-helix / NeuroD / 差分法 |
Research Abstract |
ラット海馬のスライス標本の反復刺激後に神経細胞の反応性が上昇する現象:長期増強(LTP)は、記憶の実験モデルとして注目されている。電気的な反復刺激によってLTP状態になるのは、極く限定された領域のニューロンのみであり、既知の遺伝子の発現の変化などを検討することは可能であるが、未知の遺伝子の検索は困難である。そこでテトラエチルアンモニウム処理した海馬と未処理の脳のメッセージの差分を行って、LTPに関連した未知の遺伝子のクローニングを目指した。その結果、神経細胞に特異的に発現している未知のクローンを3個程度得ることができた。そのなかの一つKW8がコードするアミノ酸配列にはMyoDやNeuroDなど分化関連遺伝子に共通に存在するベーシック・ヘリックス・ループ・ヘリックスドメイン(bHLH)が存在した。bHLHのアミノ酸配列はNeuroDとほとんど相同であったが、その前後のアミノ酸配列はこれまでに報告されているbHLHタンパク質あるいはデータベースに登録されているタンパク質とは全く異なっていた。bHLHタンパク質は転写調節因子して注目されている。実際、KW8は、酵母のGAL4遺伝子を発現させるため、ある遺伝子の転写調節因子であると考えられる。KW8とLTPの関係は未だ不明であるが、なんらかの制御因子として、神経活動にともなう重要な因子であることが期待される。例えば、長期記憶が新しい神経回路が形成されるというのであれば、記憶とは、神経組織が形成された後の再分化とも捉えられる。従って、成体でも発現している分化関連遺伝子の特徴であるbHLHタンパク質であるKW8が、神経可塑性に関与していることが期待される。
|
Research Products
(1 results)