Research Abstract |
都市河川として大阪市の大川水系を選び,その現況を冬季の調査結果と夏季の調査結果をもとに解析した.大川の上流域は順流域,下流域は感潮域であり,中之島の渡辺橋や肥後橋では時間帯によっては低層部に塩水くさびが存在し,河川底では冬季は河川水よりも高温,夏季は河川水よりも低温となっていること,ならびに河川底の海水は貧酸素状態となっていることが確認できた.京橋付近では潮位変動の影響を受け順流と逆流が交互に見られ,河川水質は寝屋川の方が大川よりも悪く,その影響で堂島川よりも土佐堀川の方が水質が悪くなる傾向にある.また,大川流域には,都市河川であるにもかかわらず,多くの種の生物が生息しており,河川水の利用に当たっては,これらの生物の保護を考慮にいれた大川独自の基準作りを行う必要がある.ここでは,環境容量の概念を定義し,温排水の影響を評価するための指標作りを行った.指標としては,水温,DO濃度,塩分濃度,水面からの放熱量,冷却水排出による汚染域の大きさを考慮した. これらの指標となる物理量は,順流域に対してはMIM法を,感潮域に対してはSIMPLE法を適用して,上記の実測調査結果を参考にして3次元数値シミュレーションによって求めた.計算は,河川流量,温排水の放水方式,放水流速・温度,排出熱量を数条件に変えて実施し,温排水による汚染が厳しくなる条件を明らかにすると同時に,熱源としての河川水の最大利用可能量を上記の評価指標に照らして明らかにした.本年度の研究目的はほぼ達成できたと考えており,その成果については本年3月の空気調和・衛生工学会近畿支部での発表を始め,学会発表を通じて公表の予定である。
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