1995 Fiscal Year Annual Research Report
二次林物質循環系の土壌及び植物根コンパートメントにおける炭素フラックス
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06660172
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
橋本 良二 岩手大学, 農学部, 教授 (80109157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白旗 学 岩手大学, 農学部, 助手 (00235756)
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Keywords | 樹木の形態発達 / 根系呼吸 / 林分発達 / 現存量増加 / リター量 / 物質循環系 |
Research Abstract |
樹木の重量成長にともなう個体の呼吸量の増大について、針葉樹3種の幼少個体を用いてとくに根系の呼吸量に着目して検討をおこなった.個体あたりの地上部と地下部の呼吸速度は,それぞれの重量成長にともない,アカマツとスギでは直線的に上昇するが,カラマツでは成長期の終盤にかけて上昇が鈍くなり,とくに地下部においてその傾向が顕著であった.これは,葉の単位重量あたりの暗呼吸速度が低下することや非同化器官の旺盛な肥大成長により木部組織の内部に呼吸活性の低い組織が形成されることに起因すると見られた. 個体あたりの地上部と地下部の呼吸速度との間には,成長時期あるいは成長段階が異なっていても,樹種ごとに直線的な関係が成り立っていた.直線の勾配は,ほぼ地下部の呼吸量に対する地上部のそれの比率を表すが,スギで大きく,次いでカラマツであり,アカマツで最も小さかった.この比率は、T/R率の影響を直接的に受けるが,T/R率は経時的に大きく変化するので,重量あたりの呼吸速度の経時的変化も大きく関与して直線的関係をもたらしていると見るべきである。樹木では,年数を経た個体の根系の呼吸量を正確に測定することはきわめて困難であるので,もし根の呼吸量と地上部の成長量あるいは呼吸量との間に一定の関係が成立するなら,高い精度で推定できることになる.その意味で,ここでの検討結果は,大いに示唆的である。 材木成長にともなう諸器官の成長量と脱落量の検討結果をもとに、森林が本来的に保持するとみられる「持続的生産システム」について考察をおこなった.考察の概要は,以下のようにまとめられる.森林の現存量(B)は,森林が成熟段階に入ると次第に増加が抑えられ最大値(B_<max>)に近づく.その際,総リター量(L)は引き続き上昇する.物質収奪曲線は(B+L)で表される.林地には,当世代のリターとともに,すでに全世代からのリターが供給されており分解減少の過程(L^*)にある.当世代のリターは,やがては供給速度と分解速度が同じレベルになると考えられるので,物質還元曲線(R)は(B_<max>-L^*+L)で表される.森林の更新・発達における物質交代は,総還元量が総収奪量を上回る,所謂先行投資の形で進むが,最終的には総収奪量が総還元量に収斂し両者が均衡する段階にはいる.
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[Publications] 白旗学,橋本良二,北川道隆: "森林土壌から放出される二酸化炭素フラックス-鉱質土壌における根系呼吸量-" 岩手大学農学部演習林報告. 27(印刷中). (1996)
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[Publications] 橋本良二: "森林発達過程における物質収奪曲線と還元曲線の平衡" 第107回日本林学会大会発表要旨集. 印刷中 (1996)
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[Publications] 橋本良二: "スギ林における地上部現存量曲線と総枯死・脱落量曲線" 岩手大学農学部報告. 22. 107-117 (1995)
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[Publications] 橋本良二: "スギ林発達過程における葉群の分布構造と動態" 岩手大学農学部報告. 22. 119-130 (1995)
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[Publications] 橋本良二,青木亨宏: "冷温帯コナラ二次林の林冠下で枯死する同種維持の炭素収支" 日本緑化光学会誌. 21(印刷中). (1996)