1995 Fiscal Year Annual Research Report
森林下層における林冠木種の樹冠の形態,動態と維持様式の解析
Project/Area Number |
06660187
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嵜元 道徳 京都大学, 農学部, 助手 (50225835)
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Keywords | 森林下層 / 光環境 / 林冠木種 / 樹冠形態 / モジュール / 動態と維持 / 更新機構 |
Research Abstract |
北海道のアカエゾマツ林の下層において優占的なコシアブラとヤマウルシの樹冠の形態と発達過程は、種間で大きく異なった。すなわち、ヤマウルシの樹形は、主軸を失い枝が側方へ著しく発達した傘型を示したのに対して、コシアブラの樹形は、明るい環境に生育している針葉樹によく見られる樹形である主軸が明瞭で側枝の発達が抑えられた縦長のものとなっていた。個体当たりの当年生シュート(モジュール)数と樹高の関係は、いずれの樹種もロジスティック曲線で近似され、それぞれの樹種が着けうるシュート数には最大値が存在することを示唆した。しかし、モジュール数の増加率が小さくなり始める変曲点樹高は樹種間で異なり、コシアブラがかなり高くなっていた。個体当たりのモジュール数の経年的増加率が0を示す個体の割合は、コシアブラが6割、ヤマウルシが9割と高率であった。この結果から、これら2種は樹冠拡大を抑え現状を維持するに留まっている個体が多いことを示唆しており、増加率0の比率が高かったヤマウルシにおいて特に著しいことが推察された。樹高成長量は、コシアブラ、ヤマウルシともに殆どが数cmに抑えられたいた。しかし、コシアブラは数10cm伸ばす長枝型と数cmしか伸ばさない短枝型の2タイプが見られたのに対して、ヤマウルシにはこうしたタイプの違いは見られなかった。樹高分布は、コシアブラが下層のいずれの樹高階においても必ず見られ樹高階間で個体差が殆どない全層型のものであったのに対して、ヤマウルシは樹高7m以上を欠き樹高増加にともない個体数が指数関数的に減少するL型を示した。こうした樹高分布の違いは更新過程の違いを反映していると考えられるが、2種間で見られた樹冠形の違い、すなわち、コシアブラにおける主軸の維持と著しい短枝形成による枝伸長の抑制機構の発達が、森林下層を生残する上で有利に働き更新過程の差をもたらしたものと考えられた。
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