1995 Fiscal Year Annual Research Report
セルロースの分子運動の視覚化による分子鎖特性の解析
Project/Area Number |
06660418
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田中 文男 京都大学, 木質科学研究所, 講師 (10109069)
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Keywords | セルロース / 分子運動 / 分子シミュレーション / 分子動力学シミュレーション / 分子鎖特性 |
Research Abstract |
β-(1,4)-D-glucanの16量体の孤立分子鎖について、300°Kの恒温層中、AllingerのMM2分子力場において、Jeffreyらのパラメーターセットを用いて、0.5fsのタイムステップで2nsのタイムスケールにわたり、400万ステップの分子動力学シミュレーションを行った。シミュレーションの結果を、分子鎖中の各原子の空間座標値のセットの時系列変化による分子鎖構造の変化として記録し、このセットを用いて、CGにより分子運動のアニメーション表示を行った。このアニメーションから、セルロース系分子鎖の分子運動は、分子鎖軸の回りの螺旋運動を基本としているが、分子鎖全体としての協調運動をもしていることを示した。このことから、セルロースのような半剛直性の分子鎖では、自由鎖の弦の振動としての特性も兼ね備えていることが示唆された。また、分子鎖のコンフォメーション変化が、螺旋運動に誘発された分子鎖軸からの、連続したセグメントのずれの運動として起こっている様子も観察された。一方、分子鎖中の各原子の空間座標値のセットの時系列変化から、グリコシド結合の回りの二つの二面角の組み合わせのセットの時系列変化を算出し、各グリコシド結合を挟む残基間の空間配置の変化とその出現頻度を算出し、二種類の組み合わせに集中していることを示した。この時系列変化の様子から、孤立分子鎖の骨格における残基間の空間配置について、結晶中のセルロース分子鎖の二回螺旋の分子鎖対称を持った構造よりも、セロバイオースの結晶中での分子鎖骨格の構造の方が高い出現頻度で発生していることが分かった。これらのことから、セルロースの分子鎖が、拘束力から解放されたときには、基本的には、隣り合った残基間の相互作用で決まる、螺旋構造を取る習性のあることが示され、セルロース系分子鎖の分子物性が、この残基間の空間配置に基づく相互作用を基本として発現していることが示唆された。
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Research Products
(1 results)