1994 Fiscal Year Annual Research Report
化学療法剤による形態変化とエンドトキシン遊離能の比較検討
Project/Area Number |
06670304
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
井上 松久 北里大学, 医学部, 教授 (10008336)
|
Keywords | エンドトキシン / β-ラクタム剤 / PBP2 / PBP3 / 形態 |
Research Abstract |
ペニシリンやセファロスポリンなどのβ-ラクタム剤は、細菌の細胞壁高次構造合成に関わる酵素を阻害して、結果的に抗菌力を発揮する。最近臨床で用いれれているβ-ラクタム剤は、抗菌力が強いが、これは細胞壁合成酵素(penicillin binding protein)に対する結合親和性が強まった結果を反映している。それは、菌の形態変化からすると、抗菌力の強い薬剤はより形態変化を惹起する,言い替えるとPBPに対する親和性が強い薬剤である言える。 第三世代セフェム剤とカルバペネム剤などのβ-ラクタム剤の中からPBP2,PBP3にそれぞれ親和性の強い薬剤を数種選び、E.cloacaeをこれらの薬剤処理することにより溶菌させると、各薬剤のPBPに対する親和性とそれに伴って起こる形態変化に伴うエンドトキシン遊離量を比較検討した。エンドトキシンはLimulus amebocyte lysate(LAL)のゲル化を判定するゲル化転倒法にて測定する。また、測定に必要な機器(トキシノメーター)は備品として購入する。またこの実験結果を計測するためのソフト(ラボソフトMT)を併せてもとめ使用した。 その結果、まず、イミペネムは(IPM)は1/4-1/2MIC濃度でE:cloacaeのPBP2に作用して菌を球状化させ,セフタジジム(CAZ)は1-4MIC濃度でPBP3にそれぞれ作用し、菌形態の伸長化を惹起させた。そこで、IPMは1/4-1/2MIC濃度、CAZは1-2MIC濃度の薬剤を作用させ、菌の形態を確認後、エンドトキシン量を求めた。その結果、PBP2 阻害剤のエンドトキシン遊離量は、PBP3 阻害剤に比べて約1/10-1/20と遥かに低いエンドトキシン量であった。
|
-
[Publications] 井上松久,他: "カルバペネム剤の細菌学的特徴" 臨床と微生物. 21. 391-397 (1994)
-
[Publications] 井上松久: "カルバペネム剤の細菌学的特徴" 第42回日本化学療法学会総会プログラム.講演抄録. 73 (1992)
-
[Publications] 井上松久: "第42回日本化学療法学会 シンポジウム(ブックレット)" 日本化学療法学会, 94 (1994)