1995 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性サイトカインを用いた損傷の生活反応判定法の開発
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06670466
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
前野 善孝 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (00145749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 博之 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (40159992)
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Keywords | サイトカイン / IL-1α / IL-1β / 損傷 / 生活反応 |
Research Abstract |
法医学実務上、重要とされる損傷の法医学的診断、即ち、損傷の生前死後の鑑別及び受傷後の経過時間の推定についてその判定法の開発を行ってきた。本年度は、昨年度に引き続き、炎症性サイトカインの一つであるinterleukin 1(IL-1)を指標として、特に人屍例の損傷皮膚を用いてその応用性について検討を加えた。対象とした損傷皮膚試料は、当法医学教室で行われた司法解剖剖検症例の内、6症例から採取した。採取した損傷皮膚は、10%緩衝ホルマリン液にて数日間固定後パラフィン包埋し、創面に対し垂直方向に厚さ6μmの連続切片を作製した。損傷皮膚組織中のIL-1の発現を調べるために抗ヒトIL-1α及びIL-1βpolyclonal抗体(ウサギ血清、Genzyme社)を一次抗体として、それぞれ1:100及び1:400に希釈したものを切片に4℃一晩作用させ、以下ABC法(VECTOR社)によりDABを基質として免疫染色を行った。同時にHE染色も行い、組織学的観察を行った。6例中3例の刺創は、受傷後の経過時間が短時間(15〜30分程度)で創面と創縁付近の真皮層内に僅かな出血像が見られるものであった。この内1例で真皮深部の結合組織内にIL-1β陽性を示す細胞が見られたが、他の2例ではIL-1の発現は見られなかった。受傷後12時間後に死亡した症例(刺創、入院治療)では、創縁付近に出血血液、リンパ球、単球等の細胞浸潤を著明に認めた。これら浸潤細胞の一部にIL-1β陽性細胞を多数認めた。しかしながら、IL-1αの発現は、観察されなかった。受傷後約1週間経過後に死亡した2症例(1例:皮下出血、1例:刺創・入院治療)の内、皮下出血において真皮深部の一部の小血管内皮にIL-1β陽性を示す他は、IL-1の発現は見られなかった。以上、IL-1は、外来刺激に対して表皮のケラチノサイトより分泌されると言われているが、今回の検索ではその結果は得られなかった。しかしながら、IL-1を用いた損傷の生活反応判定法への応用性については、受傷後短時間の損傷(1時間以内)を除けば、人屍例においても長時間経過した損傷(12時間程度)の受傷後の経過時間推定に応用可能であることが示唆された。
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