1994 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疼痛の脊髄における憎悪因子および疼痛軽減因子について
Project/Area Number |
06671550
|
Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
高野 義人 獨協医科大学, 医学部, 講師 (10134701)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 勲 獨協医科大学, 医学部, 教授 (80049808)
|
Keywords | 慢性疼痛 / 脊髄 / NMDA受容体 / ニトログリセリン / プロスタグランディンE1 / マグネシウム / フォルマリンテスト |
Research Abstract |
はじめに:慢性疼痛に脊髄レベルで影響を与える可能性のある薬剤をくも膜下腔に投与し疼痛閾値の変化を調べた. 方法:ラットの後頭骨と第1頚椎の間隙よりカテーテルを挿入し腰髄まで進め固定した.慢性疼痛モデルとして,フォルマリンテスト(以下FT)を用いた.急性痛に対する影響についてホットプレートテスト(以下HT)で調べた.薬剤は生食にて濃度の調整を行い投与量はどの濃度においても10μ1とし,カテーテルに残る薬剤は同量の生食で流し込んだ.使用した薬剤はニトログリセリン(NTG),プロスタグランディンE1(PGE1),硫酸マグネシウム(MG)である.各群の動物数は5匹以上とした. 結果:NTG(10μg)はFTにおいて第1相,第2相の両相で疼痛閾値の低下をもたらした.5μgでは有意の変化はみられなかった.PGE1(2.5μg)はFTにおいて両相で優位な疼痛閾値の低下をもたらした.PG投与後に触刺激によるライジング(うめき声を上げる)がみられた(allodynia).MGの高濃度(10%)では後肢の運動麻痺を起こした.1%では麻痺はみられず,FTにおいて第1,2相で鎮痛作用を示した.NTGではHTには影響を与えなかった. 考案:慢性疼痛には脊髄後角の二次ニューロンのNMDA受容体が関与している.この受容体が活性化すると細胞体内で一酸化窒素の産生がおこり細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇する.NTGはNMDA受容体の関与なしに一酸化窒素を遊離することで,疼痛閾値の低下をもとらしたと考えられる.脊髄において疼痛刺激によるPG産生増加させ,二次ニューロンのカルシウム濃度を上昇させてその反応を増加するとされている.くも膜下腔投与されたPGE1はこのような機序でFTの反応を増強した(疼痛閾値の低下)と考えられる.MGはNMDA受容体の活性化を阻害することから鎮痛作用を持ったと考えられる.
|