1995 Fiscal Year Annual Research Report
尿路悪性腫瘍組織内及び周囲微量元素の分布と腫瘍の進展に関する研究
Project/Area Number |
06807125
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
内田 克紀 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (20223555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下篠 信弘 筑波大学, 社会医学系, 教授 (00080622)
赤座 英之 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (70010486)
小磯 謙吉 茨城県立医療大学, 学長 (20010192)
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Keywords | 膀胱癌 / 微量元素 / プラチナ(白金) / TRXRF法 / AAS法 |
Research Abstract |
近年、化学療法の進歩により悪性腫瘍の治療成績が向上している。泌尿器癌においても、精巣腫瘍や膀胱腫瘍を中心としてシスプラチンを keydrug とした化学療法が開発され、その治療成績も比較的良好である。浸潤性膀胱癌を例にとると、その治療方針は従来は膀胱全摘術が第1選択であったが、近年開発された動注療法(経皮的にカテーテルを内腸骨動脈内に留置してそこから抗腫瘍剤を注入する局所化学療法)にシスプラチンを用いることにより完治率が高まり、膀胱を温存することの可能な症例も増加した。しかし一部に十分な治療効果の得られない症例も存在し、その原因として標的臓器内の白金濃度が不十分なことに由来する可能性もあり、組織内の白金濃度をモニターすることが可能となれば治療効果を予測することが可能となる。一般に生体組織内の微量元素の測定には従来より原子吸光法が用いられてきたが測定には50mg以上の試料が必要であった。より微量の生体試料でより正確な微量元素の測定が可能となれば容易に個々の症例における抗腫瘍剤の至適投与量を調整できる可能性がある。そこでわれわれは近年開発された全反射蛍光エックス線分析法を用いてより微量な組織試料の白金濃度が測定可能かどうかを検討した。[方法]25頭の雄性マウスを5群に分け、各群のマウスにシスプラチン(7mg/kg)を尾静脈より静注した。各群毎に一定時間(1,3,6,12,24時間)に組織を取り出し、摘出臓器を湿性灰化したのち、全反射蛍光エックス線分析(TRXRF)法と原子吸光(AAS)法により白金濃度を測定し、結果を比較検討した。[結果および考察]AAS法とTRXRF法の経時的変化を比較したところ、両者間にr=0.79と強い相関性が認められた。また、AAS法による測定値の方が各群における測定値のばらつきが大きいことから、TRXRF法の方がAAS法よりも測定値の信頼性が高かった。以上の結果から、TRXRF法は、1)試料に侵襲を加えない、2)多元素を同時に測定できる、3)同一試料を繰り返し測定可能、4)より微量の試料(TRXRF法は数mgに対してAAS法は約50mg)で微量元素を測定可能、5)高感度かつ最小誤差で検出可能であるといった利点を見いだすことができた。
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