1995 Fiscal Year Annual Research Report
日本の対フィリピン経済援助事業におけるパブリック・アクセプタンス評価の研究
Project/Area Number |
06831006
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Research Institution | SHIKOKU GAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
横山 正樹 四国学院大学, 社会学部, 教授 (90182716)
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Keywords | 経済援助 / ODA(政府開発援助) / フィリピン / パブリック・アクセプタンス / 漁業基地 / 海外経済協力基金 / 国際協力事業団 |
Research Abstract |
本研究では、フィリピンにおける日本のODA事業について、関係者によるパブリック・アクセプタンス(受容・協力・活用)の実状を現場のデータにもとづいて解明し、評価すべく試みた。 本年度においては、1991〜93年を中心とする時期のODA事業現地調査で収録ずみの8ミリ・ビデオテープからVHSビデオテープに複写・編集した、各事業建設・運営主体の関係者による事業説明・インタビュー等の資料的価値の高い部分の整理・分析を主としておこない、並行して関連する調査の筆記記録・収集文書およびビデオ資料を含め、データベース入力をさらに進めた。 そこから、漁業基地建設事業とカラバルソン地域総合開発計画を主とした日本のODA事業および関連機関・団体等によるアクセプタンスにおいて、当初の目的・期待と現実とのギャップの存在が明らかにされた。 施設の建設は計画通り完成しても、比国側に引き渡された後に汚職・環境汚染等の運営上の支障が生じると、日本のODAのイメージダウンとなってしまう点がとりわけ深刻な問題である。具体例としては、たとえばカマリガン漁港建設事業。海産物用冷凍倉庫を中央大手企業が鶏肉貯蔵に流用。また当然あるべき専用トラック等が遠方に持ち出されて行方不明。こうした事実に、水産庁出先機関係員らの不満がつのる。根本的には同漁港の立地条件が問題。河川港で漁場から遠く、干潮時の漁船航行が不可能で、海産物がなかなか集まらない。施設の操業率が約50%という。日本のODAの評判に陰りとなる事例のひとつであった。 類似の問題事例がかなりあることから、改善の余地も大きい。ODA事業計画と実態のずれ、また諸関係者の立場による評価の違いなどにつき、再度の現場訪問調査を含むこうした研究の継続の必要性を確信する。 本研究の成果は4月中旬にホノルルの国際フィリピン学研究大会で報告、後に論文の発表を予定している。
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