1996 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト・アラブ共和国アブ・シール南地区における丘陵頂部および周辺遺跡の調査
Project/Area Number |
07041025
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉村 作治 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (80201052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 裕之 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 助手 (60277762)
長谷川 奏 二松学舎大学国際政治経済学部, 講師
秋山 慎一 早稲田大学, 文学部, 講師 (20221715)
高宮 いづみ 早稲田大学, 文学部, 講師
近藤 二郎 早稲田大学, 文学部, 講師 (70186849)
森 啓 東北大学, 理学部, 教授 (00004466)
櫻井 清彦 昭和女子大学, 大学院・生活機構研究科, 教授 (60063195)
西本 真一 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (10198517)
中川 武 早稲田大学, 理工学部, 教授 (30063770)
高橋 龍三郎 早稲田大学, 文学部, 助教授 (80163301)
菊池 徹夫 早稲田大学, 文学部, 教授 (00147943)
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Keywords | エジプト / 北サッカラ / アブ・シール南 / 新王国時代 / 石造建造物 / カエムワセト / ラメセス2世 / ネクロポリス |
Research Abstract |
平成8年度には、平成3年度以降に発掘調査が行われていたアブ・シール南遺跡丘陵頂部の石造建造物周辺の調査を継続した。この石造建造物は、新王国時代第19王朝ラメセスII世の第4王子カエムワセトに所属することが、既に明らかになっている。 平成8年度の調査の主な目的は、石造建造物の西部の構造を把握すること、建造物の性格を明らかにすること、および石造建造物北西に隣接する日乾レンガ建造物の構造と性格を明らかにすることであった。夏季の発掘期間中に、既発掘区の西側に発掘区を拡張し、春期の整理作業期間中に出土遺物の観察・実測作業を実施して、上記の目的達成に努めた。また、両調査期間中に、同丘陵周辺の古生物調査および旧石器遺跡の調査も行った。 発掘調査の結果、石造建造物の西端をなす外壁を検出し、正確な建造物の規模を確認することができた。また、石造建造物の西側と北西とに、2つの異なる日乾レンガ建造物が検出された。石造建造物西側に接して築造された日乾レンガ建造物は、複数の長方形を呈する部屋から構成されており、石造建造物との隣接関係および日乾レンガ建造物の一部に使用されていた石材の性質から、日乾レンガ建造物の時期は石造建造物より遅いことが推測されたが、建造物の性格はこれまでのところ不明である。もう1基の日乾レンガ建造物は、石造建造物北西に位置し、既に上部は破壊されて基礎部のみが検出された。付属遺物もなく、建造時期は明らかではない。後者の日乾レンガ建造物周辺からは、多量の倒壊したレンガと、それに混じて彩色プラスター断片とファイアンス・タイルが多数出土したことから、彩色とファイアンス・タイルとで装飾された建造物が付近に存在したことが推測された。さらに、倒壊したレンガの中から第18王朝アメンヘテプII世のカルトゥーシュがスタンプされたレンガが検出され、第18王朝の遺構の存在の可能性も高まった。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] 柏木裕之、吉村作治、中川武、西本真一: "アブ・シール南・丘陵頂部建築遺構の柱の復原研究" 日本建築学会技術報告集 日本建築学会. 第2号. 181-186 (1996)
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[Publications] 吉村作治、中川武、近藤二郎、溝口明則、西本真一、柏木裕之: "アブ・シール南・丘陵頂部建築遺構の建築墨書" 日本建築学会技術報告集 日本建築学会. 第2号. 189-193 (1996)
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[Publications] 吉村作治、長谷川奏: "早稲田大学第3次アブ・シール丘陵頂部発掘調査概報" エジプト学研究 早稲田大学エジプト学会. 第4号. 111-133 (1996)
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[Publications] 高宮いづみ: "カエムワセトのレリーフと建造物について" エジプト学研究 早稲田大学エジプト学会. 第4号. 4-21 (1996)
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[Publications] 吉村作治、近藤二郎: "古代エジプトの謎に迫る" 早稲田の考古学 早稲田大学文学部考古学研究室. 12-13 (1996)
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[Publications] 吉村作治: "早稲田大学による1995年度のエジプト調査" 第3回公開研究会 紅海文化とナイル文化 中近東文化センター(1996年6月).
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[Publications] 高宮いづみ: "カエムワセトの建造物におけるレリーフ装飾について" 日本オリエント学会第38回大会 平安女学院短期大学(1996年10月).
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[Publications] 高宮いづみ: "第5次アブ・シール南遺跡丘陵頂部の発掘報告" 早稲田大学エジプト学会第27回エジプト学研究会 早稲田大学国際会議場(1996年11月).
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[Publications] 柏木裕之: "アブ・シール南遺跡の建築的特徴について" 早稲田大学エジプト学会第28回エジプト学研究会 早稲田大学国際会議場(1997年1月).
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[Publications] 高宮いづみ: "カエムワセトの建造物におけるレリーフ装飾について" オリエント 日本オリエント学会. 39巻2号(印刷中). (1997)
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[Publications] Izumi H.Takamiya and Sakuji Yoshimura: "Waseda University Excavations at North Saqqara : A preliminary report on the first three seasons,December 1991-September 1993" Orient The Society for Near Eastern Studies in Japan. vol.32(in press). (1997)
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[Publications] Sakuji Yoshimura,Izumi H.Takamiya,Hiroyuki Kashiwagi and Shinichi Akiyama: "Waseda University Excavations at North Saqqara : A preliminary report on the fourth season,August-September 1995" エジプト学研究 早稲田大学エジプト学会. 第5号(印刷中). (1997)
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[Publications] 吉村作治: "エジプト発掘30年" 平凡社, 110 (1996)