1996 Fiscal Year Annual Research Report
パキスタン・ハザーラ地方における古代都市と交易路に関する考古学的・美術史学的研究
Project/Area Number |
07041033
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
西岡 康宏 東京国立博物館, 学芸部, 部長 (40000351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
時枝 務 東京国立博物館, 考古課, 主任研究官 (00217473)
古谷 毅 東京国立博物館, 考古課, 主任研究官 (40238697)
井上 洋一 東京国立博物館, 考古課・先史室, 室長 (60176451)
望月 幹夫 東京国立博物館, 考古課・有史室, 室長 (60141991)
田辺 征夫 東京国立博物館, 考古課, 課長 (50000493)
安藤 孝一 東京国立博物館, 企画課, 課長 (60202785)
小泉 惠英 東京国立博物館, 東洋課・インド・南東アジア室, 研究員 (40205315)
後藤 健 東京国立博物館, 東洋課・西アジア・エジプト室, 室長 (40132758)
松本 伸之 東京国立博物館, 学芸部・企画課・列品室, 室長 (30229562)
鷲塚 泰光 東京国立博物館, 次長 (80191740)
薹信 裕爾 東京国立博物館, 学芸部・企画課・普及室, 室長 (80163715)
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Keywords | パキスタン / ガンダーラ / ハザーラ / 仏教寺院 / ストゥーパ / カロ-シュティー |
Research Abstract |
パキスタン北西辺境州ハザーラ地方に位置するザールデリー遺跡の発掘調査の第2期となる本年度は、ストゥーパ区西側を調査区域とし、ストゥーパ区における主ストゥーパ以外の遺構の存在の有無の確認、ストゥーパ区西側における寺域の確認を目指した。その結果、この区域から2件の石造建造物の遺構を検出した。さらに94年度の調査の際に一部を確認していた。ストゥーパ区を形成するおよそ70m四方のプラットフォームの西側土留め壁の位置を確認した。 2件の石造建造物は、南北に並んで配置される。破壊が甚だしいが、いずれも東側すなわちストゥーパ側に開口部をもつ建造物と見られる。北側の遺構は、南北9m、東西16mの長方形プランを有し、壁の厚みは1.4mを超える。壁はガンダーラの建築遺構では一般的なダイアパー式で積まれる。南側の遺構は、およそ8m四方のほぼ正方形プランで、一部を除いてダイアパー式の石壁を築く。壁の厚みは1.2m。いずれも遺構の性格を特定できる材料に乏しいが、主ストゥーパに関連する建造物、すなわち寺院伽藍の付随施設と見られる。 猶、プラットフォーム西側土留め壁付近に設けられた後代のピットより、カロ-シュテイー文字の刻銘をもつ長方形石板を3点発見した。この石板は、50×40×10cm程の大きさで、横断面が弧状に湾曲するように鑿で加工整形され、平瓦のような形状を呈する。表裏のほぼ全面にわたって鑿痕を残すが、凸面側中央部に平坦に加工した個所を設け、そこに銘文を刻している。これらの石板は当初の設置場所から現位置へ投棄されたものとみられ、出土状況からはどの遺構に属する遺物であるかが判断できない。銘文は2つが「自己の資金において」、1つが「ボイレアの増広(にかかりしもの)」と記される。仏教寺院において一般に行われていたストゥーパの増広が、本寺院においてもなされていたことがこの銘文から窺え、寺院の歴史を辿る上で極めて貴重な資料を提供している。
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