1997 Fiscal Year Annual Research Report
ネパールにおける農業開発と開発援助-農業技術移転の視点から-
Project/Area Number |
07041043
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
土井 時久 北海道大学, 農学部, 教授 (60137388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茅野 甚治郎 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (40163729)
佐々木 市夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (70125384)
近藤 巧 北海道大学, 農学部, 助手 (40178413)
長南 史男 北海道大学, 農学部, 助教授 (00113697)
黒河 功 北海道大学, 農学部, 教授 (90125310)
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Keywords | 開発援助 / 管井戸 / 灌漑 / 農業技術 / サク村 / ジャクナプル / 浅井戸 / 深井戸 |
Research Abstract |
本研究では,低開発地域の農業の生産性を技術移転による開発援助によって引き上げるうえで,何が隘路となっているのか,改善すべき点は何かを明らかにすることを課題としている。初年度は,小規模な自然流下式灌漑の効果を,カトマンズ盆地のサク村の実態調査によって検討した。従来の多くの研究では灌漑の稲作に及ぼす効果が論じられ,特に高収量品種の開発・普及を可能にする灌漑施設整備,化学肥料の低価格での供給の重要性が強調されてきた。この事例でも灌漑施設整備が稲作に及ぼす効果は認められた。が,それ以上に大きな効果は,乾季の馬鈴薯作と野菜生産にみられた。不在地主制のもとで米収穫量の多くが物納地代となり,乾季作の馬鈴薯等は地代徴収の対象外におかれているため,その収量をあげて現金所得を増加させようとする誘因が強く働いている。 次年度に調査したタライ地方,ジャクナプル地域の日本の援助による井戸灌漑地域では,大規模な深井戸灌漑は,設置後の共同利用組織の運営が非効率的で,破損箇所の補修も不十分,中には設置後まもなく使用不能のまま放置されたままのものもある。これに対して,資金援助によって個別農家に導入された浅井戸は管理が行き届き,利用頻度も高くなっている。ただし,日本が当初期待した乾季の稲作は普及せず,多くは小麦作に利用され面積あたり収量は2〜3割も引き上げられている。その決定的な理由は灌漑水の限界費用が小麦では限界収入と均衡するのに対して,稲作では水の限界費用が稲作の限界収入をはるかに上回ることにある。 最終年度はこれら2調査地域の補足調査をおこなった。サク村では灌漑水路の詳細な地図化と利用方法の流域別分類を行なった。ジャクナプル地域では,浅井戸の利用方法,インドからの不法移住する土地なし農民の農作業実態と所得,消費水準に関する面接調査,バザ-ルの実態調査を行った。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Narayan P. Dhakal: "Farmer-Managed and Goverment-Managed Irrigation Systems in Nepal" Journal of Faculty of Agriculture Hokkaido University. 66・1. 139-150 (1994)
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[Publications] Narayan P. Dhakal: "International Assistance and Fertilizer Market in Nepal" 農経論業第52集. 52. 193-201 (1996)
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[Publications] 長南 史男: "ネパールの農業発展と小規模灌漑システム-サク-村における知見-" 農経論業第53集. 53. 125-137 (1997)
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[Publications] 土井 時久: "ネパールにおける灌漑農業の経済的意義-開発援助の視点から-" 農村研究. 85. 1-10 (1997)
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[Publications] 土井 時久: "ネパールへの肥料援助とカトマンズ盆地における農業の変化" 北海道地理. 71. 1-11 (1997)