1996 Fiscal Year Annual Research Report
ナショナル・アイデンティフィケーションに関する総合的比較研究-法的・政治的・社会的側面から-
Project/Area Number |
07041046
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岩崎 美紀子 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (30183015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ハラルド クラインシュミ 筑波大学, 歴史人類学系, 助教授 (60225240)
山田 直志 筑波大学, 社会工学系, 助教授 (10210460)
河野 真理子 筑波大学, 社会科学系, 講師 (90234096)
岡本 美穂 筑波大学, 社会科学系, 講師 (20203771)
秋野 豊 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (70142677)
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Keywords | 国籍 / 条約 / 国境 / 民族 / 少数派 / 地域協力 / ナショナリズム / 重層アイデンティティ |
Research Abstract |
平成8年度は、河野、岩崎、岡本、秋野の4人が海外調査を行った。 河野は、法人の国際的な経済活動の保護促進および管理について、国家が果たすべき機能の変化を調査・研究するために、この分野の専門家が多いフランスに赴いた。その結果、最近増加している経済分野での条約は、国家にとって、自国の法人を保護・管理するという従来の意味だけでなく、国際協力という形態をとりながら自らの行動への管理を課すという新たな側面を有していることがわかった。このため、条約の規定における法人の国籍の決定規準について、古典的な国籍決定の方法のみならず、より機能的な国籍の概念の導入が重要であることがわかった。 岩崎は、カナダにおいて民族と国家の問題を調査・研究した。ケベック問題は、フフランス系カナダのナショナリズムに基づいており、政治的には、カナダのなかでの自治権の拡大、あるいは国家としてのケベックを成立させるためにカナダから分離を要求する。アイデンティフィケーションの観点からみると、フランス系としてはケベックに、国籍としてはカナダに、グローバルな地域としては北米、といった複数でかつ重層的なアイデンティティが存在しており、その間で重心が移動することと、この3つのアイデンティティは地域ベースでもあることが、ケベック問題を長い間解決できない原因であることがわかった。 岡本は、一体的であった北欧諸国が、EUの加盟をめぐって、加盟国と非加盟国に分かれ、これが北欧地域協力体制がどのような影響を与えるかを調査・研究した。とくに国民投票によりEUへの非加盟を決めたノルウェーに焦点をあて、バレンツ地域協力、環バルト海協力が強化されていく要因を探った。 秋野は、体制移行が進む旧社会主義圏で新興独立国家の国境線の出現と新たなナショナル・アイデンティティの創造の相互関係を調査した。新国境の確定過程や国境管理の主体の調査は、実際に国境を通過することで行った。ナショナル・アイデンティティがどのように新憲法のなかで規定されていったかを調査した結果、国境の問題とナショナル・アイデンティフィケーションの間には、相関関係が存在していることがわかった。
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Research Products
(14 results)
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[Publications] 岩崎美紀子: "アジアの連邦国家(2)-マレーシア-" 地方自治. 585. 15-38 (1996)
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[Publications] 岩崎美紀子: "連邦制と国家建設" 地方自治. 587. 22-46 (1996)
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[Publications] AKINO,Yutaka: "Moscow's New Perspectives on Sino-Russian Relations" Socio-Economic Dimensions of the Change in the Slavic-Eurasian World. 296-303 (1996)
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[Publications] AKINO,Yutaka: "Russia and Asia" Change of Russian Political System and Its Impact on Diplomacy II. 48-51 (1996)
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[Publications] 秋野豊: "地域紛争の行方" NIRA政策研究. 9. 26-29 (1996)
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[Publications] 岡本美穂: "新たな地域協力の試み-バレンツ地域協力とノルウェー" H.クラインシュミット編「国際地域統合のフロンティア」彩流社. (3月刊行予定). (1997)
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[Publications] 河野真理子: "スターレット事件に見られる収用に関する国際法原則" 筑波法政. 19. 145-171 (1996)
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[Publications] 河野真理子: "投資紛争解決国際センターにおける仲裁判断のコントロール:仲裁制度における裁判所の権限と当事者の意思の妥当範囲についての一考察" 国際法外交雑誌. 96(7)(刊行予定). (1997)
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[Publications] YAMADA,Tadashi: "EC Integration and Japanese Foreign Direct Investment in the EC" Contemporary Economic Policy. 14、1. 48-57 (1996)
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[Publications] YAMADA,Tadashi: "The Impact of Marijuana and Alcohol Use on High School Completion" Health Economics. 5、1. 77-92 (1996)
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[Publications] YAMADA,Tadashi: "An Economic Analysis of ChineseFertility Behavior" Social Science and Medicine. 47・7. 1027-1037 (1996)
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[Publications] KLEINSCHMIDT,Harald: "Migrationism in the Anglo-saxon Chronicle" SRPNIS Discussion Paper. 30. 1-28 (1996)
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[Publications] KLEINSCHMIDT,Harald: "The Old English Annal for 757" Journal of Medieval History. 22. 209-224 (1996)
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[Publications] クラインシュミット、秋野、岩崎、岡本、山田: "国際地域統合のフロンティア" 彩流社(3月刊行予定), (1997)