1996 Fiscal Year Annual Research Report
世界海洋観測システム(GOOS)の海洋物理学的目標の研究
Project/Area Number |
07041093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平 啓介 東京大学, 海洋研究所, 教授 (50013579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SIEDLER G. 独キール大学, 海洋研究所, 教授
LARSEN J 米国海洋大気庁, 太平洋環境研究所, 研究官
GUYMER T.H. 英国サザンプトン海洋センタ海洋循環部, 部長
藤尾 伸三 東京大学, 海洋研究所, 助手 (00242173)
柳本 大吾 東京大学, 海洋研究所, 助手 (40260517)
小賀 百樹 琉球大学, 理学部, 助教授 (50153515)
山城 徹 鹿児島大学, 工学部, 助手 (20158174)
中村 啓彦 鹿児島大学, 水産学部, 助手 (50284914)
市川 洋 鹿児島大学, 水産学部, 助教授 (60128410)
川辺 正樹 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (40143549)
日比谷 紀之 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (80192714)
竹内 倶佳 電気通信大学, 工学部, 教授 (00017378)
力石 國男 弘前大学, 理学部, 教授 (70038561)
柳 哲雄 愛媛大学, 工学部, 教授 (70036490)
山形 俊男 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (50091400)
花輪 公雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40142921)
今脇 資郎 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (40025474)
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Keywords | 世界海洋観測システム / 海洋物理学 / 海洋乱流 / 海底ケーブル利用 / 海洋音響学 / NEAR-GOOS / ユーロGOOS / 衛星海洋学 |
Research Abstract |
気候変動に果たす海洋の役割の解明や海洋空間、海洋生物資源など海洋利用の増進のために世界的な海洋観測システムを構築することがユネスコ政府間海洋学委員会を中心にして推進されている。海洋変動の予報や気候の予測を実現するための長期にわたる組織的な観測システムの構築が目標であり、船舶やブイ、人工衛星観測などのデータ収集、解析、配布、そして海洋構造を力学的に記述する診断モデル、それをもとに海洋変動を予測する数値モデルの開発など海洋物理学的な研究課題が多い。世界海洋観測システムの構築の基礎研究のために、文部省国際協同研究計画(GOOS)が平成5年度から5年計画で実施されている。世界に先導してGOOS研究を実施している日本として、研究成果を世界に波及するために海外研究者との意見交換が必須であり、本国際学術研究では、米国、カナダ、ドイツ、英国を主たる対象として実施する。 気候変動の検証のために深層研究は重要であり、観測船を利用することが必要であるが、大洋の中央部の観測のために高頻度で観測船を運用することは経済的に、そして船舶の不足で1国では困難である。国際的に観測船を共同利用することが有効であるが、大規模に研究資材を輸送する観測は日本では従来ほとんど実績が無かった。平成8年度に本研究では、2人をグアムに派遣してドイツの海洋研究船ゾンネ号に乗船させマリアナ海溝の係留流速計を回収し、あわせて密度場観測による深層循環の研究に従事させた。乗船期間は1996年10月8日から10月30日でポナペで下船した。3トンの係留観測資材はグアムから東京まで舶用コンテナを賃貸して輸送した。回収された流速記録の解析が進行しており、1998年にはドイツの研究作業を東京大学海洋研究所白鳳丸で実施する予定であり、この実績は世界海洋観測システムにおいて活用される。 平成8年度の大きな進展の1つは、海底ケーブル利用による海流計測である。津軽海峡、大島〜八丈島間、沖縄〜台湾間の計測が行われ、本研究で実施している米国海洋大気庁太平洋環境研究所との協力で地磁気変動の除去などデータ解析が進展した。浜田〜釜山、沖縄〜台湾、沖縄〜ルソン島間の海底ケーブルを海流計測専用として東京大学海洋研究所が譲渡を受ける交渉が進展している。これにより、台湾東方で強勢な海流として形成される黒潮の流量、日本海への流入、津軽海峡からの流出、伊豆海嶺上の通過流、の流量がリアルタイムで計測できる可能性が得られた。電圧値を流量に変換するために直接測流による較正実験が重要課題となった。 海流は海洋変動を引き起こす要因であり、これを境界条件とする海洋循環力学モデルの開発が進められており、東シナ海、日本海を対象とする縁辺海モデルが研究され、米国の研究者との打ち合わせが行われた。モデルの重要なパラメータである乱流輸送の研究打ち合わせも行われた。海洋変動の解析、太平洋の深層循環の解析が進められ、国際学会で研究発表ならびに研究打ち合わせを行った。海洋音響学の進展についても派遣により意見を交換した。 世界海洋観測システムのパイロットとして地域計画はその成果が身近に示されるので効果的である。日本は中国、韓国、ロシアと協力して日本海、黄海、東シナ海の海洋データをリアルタイムで交換し、毎日の海況をマッピングすることを目指した北東アジア地域計画(NEAR-GOOS)に取り組んでいる。1996年中にその枠組みが得られ、観測データ数の増加と利用促進をはかる段階になった。また、NEAR-GOOSで得られる毎日に海況を基に海況予報を行う研究計画が企画されている。ヨーロッパではユーロGOOSが進行しておりそのシンポジウムに派遣するとともに、ユーロGOOSの事務局を担当している英国サザンプトン海洋学センターからT.ガイマ-を招聘してユーロGOOSの進捗と同氏の専門である衛星海洋学のGOOSへの寄与について紹介していただき、英国との共同研究の打ち合わせを行った。
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[Publications] 平啓介: "ドイツ海洋研究船「ゾンネ」乗船記" 月刊「海洋」. 29・2. 127-133 (1997)
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[Publications] 平啓介: "Observation of temperature and velocity in the coastal water off Kuala Terengganu, Malaysia." Journal of Oceanography. 52. 251-257 (1995)
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[Publications] 川辺正樹: "Flow distribution at 165E in the Pacific Ocean. Biogeochemical Processed and Ocean Flux in the Western Pacific,ed.by H.Sakai and Y.Nozaki" Terra Scientific Publishing Company,Tokyo. 629-649 (1995)
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[Publications] 川辺正樹: "Variations of current path,velocity and volume trasport of the Kuroshio in relation to with the large meander." J.Phys.Oceanogr.25. 3103-3117 (1995)
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[Publications] 柳哲雄: "Baroclinic eddie south of Cheju Island in the East China Sea." J.Oceanogr.52. 763-769 (1995)
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[Publications] 花輪公雄: "A new depth-time equation for Shippican or TSK T-7, T-6 and T-4 expendable bathythermographs (XBT)" Deep-Sea Resesarch. 42. 1423-1431 (1995)
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[Publications] 平啓介(共著): "Processing of oceanographic station data." UNESCO, 138 (1991)
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[Publications] 平啓介(共著): "海と地球環境-海洋学の最前線 日本海洋学会編" 東京大学出版会, 407 (1991)
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[Publications] 平啓介(共著): "海洋の動態 梶浦欣二郎編" 恒星社厚生閣, 531 (1985)
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[Publications] 平啓介: "アメリカ合衆国における海洋情報の収集と提供状況" (財)日本海洋協会, 81 (1984)
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[Publications] 平啓介(共著): "海のはなし(V)" 技報堂出版, 164 (1984)
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[Publications] 花輪公雄(共著): "大気、海洋の相互作用" 東京大学出版会, 336 (1996)