1997 Fiscal Year Annual Research Report
不登校現象の現代的構造と実践的対応に関する総合的研究
Project/Area Number |
07301038
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
菊地 栄治 国立教育研究所, 教育経営研究部, 主任研究官 (10211872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保坂 亨 千葉大学, 教育学部, 助教授 (30173579)
有元 典文 川村学園女子大学, 文学部, 講師 (30255195)
武内 清 上智大学, 文学部, 教授 (30012579)
森 重雄 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (80174366)
佐藤 全 国立教育研究所, 教育経営研究部, 部長 (50004114)
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Keywords | 不登校現象 / 近代的世界観 / まなざし / かかわり / ホームスクーリング / フリースペース |
Research Abstract |
本研究は、これまでの研究の理論的限界を認識した上で、不登校現象の現代的構造と実践的な対応について多面的・多角的な検討を加えることを目的としている。具体的には、(1)「不登校」をめぐるさまざまな言説を歴史的・批判的に考察し、そこに潜む近代的な世界観を同定する、(2)質問紙調査を中心とする研究方法の限界を超えながら、子どもたちと生活体験を共有する中でかれらの「声」をじっくりと聴く、(3)さまざまな具体的実践の実態を明らかにすることで、「不登校現象」なるものが私たちの人間関係・社会関係の再構築にどのような示唆を与えるかを読み解いていく。 本年度の文献研究・調査研究を通じて、以下の諸点が明らかになった。(1)就学義務の規定はきわめて日本的な「変容」によって学校化のありようを枠づけていき、実態レベルでも「不登校」への矯正的なアプローチが歴史的に繰り返されてきた、(2)ホームスクーリングはひとつのオルタナティブとしての可能性をもつが、利用状況には家庭の社会的・文化的バイアスがみられる、(3)フリースペースの実践は現実に根ざしソーシャルワークの視点から子どもと関わるスタンスをとっており、自発的なネットワークとして自然な形で社会的なつながりを醸成している、(4)「遊び・非行」型の不登校には家庭内の人間関係の現代的な特徴が投影されており、教育を「福祉」の視点で新たに捉え直す必要性がきわめて大きい、(5)不登校を不登校の問題として押し込めるのではなく、〈まなざし〉の転換をふまえた上で新しい〈かかわり〉のあり方を模索していくことが求められる。
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