1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07307024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Co-operative Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大井 玄 東京大学, 医学部(医), 教授 (70114410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 祥友 東京都精神医学総合研究所, 副参事研究員 (30163299)
濃沼 信夫 東北大学, 医学部, 教授 (60134095)
志真 泰夫 国立ガンセンター東病院, 看護ケア病棟, 医長
霞 富士雄 癌研究会附属病院, 乳腺外科, 部長
東 靖宏 埼玉県立ガンセンター, 第一診療部, 部長
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Keywords | 乳癌 / 患者会 / 心理・社会的援助 / サポート・グループ / 質的研究 / セルフ・ヘルプグループ / グラウンデッド・セオリー |
Research Abstract |
平成7年度は先ず国内の既存の癌患者会の活動状況を知る目的で、「あけぼの会(乳癌)」など5つの癌患者会の具体的な活動内容に関する情報を得た。いずれの会も医療やリハビリに関する情報提供を親睦活動、技術修得などが活動の主体であり、アメリカなどの患者会に見られるような、同病者の前で感情を表出して体験を語り合う形の活動はほとんど見られなかった。 平成7年4月に都内総合病院において10名の乳癌患者に非構造化面接を施行した。その知見を参考にしつつ、患者の視点から乳癌経験の全容を明らかにすることを目的として、同年8月から9月にかけて首都圏の癌専門病院において計31名の乳癌患者に半構造化面接を施行した(対象者の平均年齢は49.0±9.5才、術後経過時間は平均3年1カ月)。面接は、診断のきっかけに始まり、治療方針の決められかた、情報収集行動、家族や医療従事者との関係、患者仲間との関係、患者会への興味などについて時系列に沿って質問する形で行った。面接は対象者の許可を得て録音し、逐語的にテープ起こしを行い、質的分析法の一つであるグラウンデッド・セオリー法の手順に従って内容を分析した。 分析から以下の知見を得た。(1)病院内には、セルフ・ヘルプ・グループに類似した同病者の自然発生的な支援システムが構築され、大部分の患者に肯定的に受け止められていた。(2)しかし、病院外の既存の患者会には興味をもたない対象者が多かった。(3)再発患者や比較的若年の患者は患者集団の中で孤立しやすい立場にあった。(4)対象者の約半数は乳癌に関する情報収集をしないか、意識的に情報を遠ざけていた。(5)治療決定の際、大部分は主治医の意見に初めから従っており、自分の考えを表明して主治医と相談して決めた対象者はごく一部であった。(6)大部分の対象者は非当事者専門家による心理・社会的支援は有用であろうと認識していた。 次年度以降は上記の知見を基に、質的な解析に加え量的な調査を行い、癌患者へのありうる援助システムを考案していきたい。
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[Publications] Ohi. G: "Ethical orientations and dignified death." Psychiatry and Clinical Neurosciences. 49. S155-159 (1995)
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[Publications] 大井玄: "がん患者の生きがい「役割意識」再訪" ターミナル・ケア. 5(4). 301-302 (1995)
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[Publications] 大井玄: "国際医療協力のありかた" 新医療. 244. 66-69 (1995)
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[Publications] 金恵京、他: "韓国農村地域の在宅高齢者におけるソーシャル・サポートの授受とQOL" 日本公衆衛生雑誌. 43. 37-49 (1996)
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[Publications] 赤林朗、大井玄: "医療・看護実践および教育の場におけるクリニカル・エリックスの役割" 生命倫理. 5(1). 55-59 (1995)
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[Publications] 東靖宏、他: "定期検診に有効な診断法と検診間隔" 日乳癌検診学会誌. 4(2). 123-128 (1995)