1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07409010
|
Research Institution | Nara National Cultural Properties Research Institute |
Principal Investigator |
黒崎 直 奈良国立文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 室長 (60000494)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花谷 浩 奈良国立文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (70172947)
深澤 芳樹 奈良国立文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (40156740)
橋本 義則 山口大学, 人文学部, 助教授 (60164802)
|
Keywords | トイレ / 寄生虫卵 / 籌木 / 御厠殿と御樋殿 / 溲瓶 / 人糞肥料 / ギブサイト / 出産儀礼 |
Research Abstract |
1992年1月の藤原京跡におけるトイレ遺構の発見は、考古学、昆虫学、寄生虫学、花粉学などの共同研究によって、トイレ遺構の存在を証明した最初の例であり、トイレ遺構内に堆積した土壌から引き出すことのできる情報が膨大であることを示した。 本研究では上記の成果を継承発展させるべく、新たに文献史学、建築史学、民俗学とも共同しながら、発掘された古代・中世のトイレ遺構の事例を収集し、以下の諸点を検討した。すなわち、(1)トイレ遺構の特定の方法、(2)土壌及び寄生虫卵分析の課題、(3)人糞肥料の利用とトイレ遺構、(4)居住区内におけるトイレの位置とその上屋構造、(5)中世におけるトイレ遺構の展開過程、(6)平安時代におけるトイレの呼称、(7)古墳時代の水洗トイレ遺構の性格、(8)移動式トイレ(溲瓶など)の追求がそれであり、あわせて、トイレ遺構の展示方法やマスコミ報道についても検討を加えた。 (1)(2)については、過去に発掘されたいくつかの土坑遺構をも対象にしながら、トイレ遺構としての属性を整理し、かつ地域的な差異を明らかにした。また(3)については、出土しなくなる12世紀末頃を境に、人糞肥料の利用が本格化した可能性を指摘した。(4)〜(6)については、研究の現状を整理しながら、今後への課題を抽出した。(7)については、土壌分析の成果を基本に、民俗学の成果を加味しながら「出産儀礼」に伴う遺構の可能性を想定した。また(8)では、土器の内面に付着する白色物質が、尿由来の物質である可能性の大なることを明らかにした。 このように本研究は、自然科学と人文科学とが共同したトイレ遺構の総合的研究である。これにより永らく陽の目をみなかったトイレ遺構が、より人間「臭い」歴史を復原する重要な資料として、人々に注目される一助になれば幸いである。
|