1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07451013
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (B)
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
千野 香織 学習院大学, 文学部, 助手 (20163727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 忍 千葉大学, 文学部, 助教授 (90272286)
亀井 若菜 学習院大学, 文学部, 助手 (30276050)
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Keywords | 絵巻 / ニュー・アート・ヒストリー / ジェンダー / クラス / レイス / セミ・フェミニズム / 障壁画 |
Research Abstract |
本年度は、いくつかの絵巻作品を実地調査し、データを収集・整理すると同時に、作品解釈のための理論についても研究を進めた。具体的には、「男衾三郎絵巻」全巻のスライド撮影をふくむ詳しい調査研究を行ない、またアメリカ合衆国にある「平治物語絵巻」についても、国内の関連作品を調査した。「酒呑童子絵巻」「一遍聖絵」については、次年度に向けて予備的な調査を行なった。理論面では、カナダとニュージーランドの大学で教鞭をとっている二人の教授を学習院大学へ招き、両国におけるジェンダー研究の現状を報告してもらった。また千野(研究代表者)と池田(分担者)は95年秋、アメリカ合衆国の学会に参加、口頭発表し、多くの美術・文学・歴史研究者とディスカッションを行なった結果、今後の美術史研究には、ジェンダーやクラス、レイス、エスニシティ、といった視点からの分析が不可欠であることを実感した。そこで帰国後、フェミニズムやポスト植民地主義理論、カルチュラル・スタディーズなどの諸文献を収集・研究し、絵巻作品の実地調査による成果と併せて、作品解釈の新しい可能性を探った。96年5月刊行予定の『女と男の時空』第3巻に掲載される千野(代表者)と池田(分担者)の論文は、本年度のそのような研究の成果のひとつである。亀井(分担者)もこうした方向で研究を進めており、「酒呑童子絵巻」研究の一部を学習院大学の研究会において口頭で報告した。また、絵巻と障壁画を併せて考えていくことの必要性が痛感されたため、南禅寺、大徳寺、知積院などの寺院において、障壁画の詳しい調査を実施し、データを収集中である。障壁画の調査は美術史研究者のみでは不可能であり、建築史研究者との共同作業が求められる。本研究においても、神奈川大学建築学科の西和夫研究室とともに、障壁画の調査研究を行なっている。これは来年度も継続していきたい。
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[Publications] 千野香織: "嘲笑する絵画-「男衾三郎絵巻」にみるジェンダーとクラス" 『女と男の時空-日本女性史再考』第3巻. (1996)
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[Publications] 池田忍: "合戦絵の中の女性像-「性」を印された身体-" 『女と男の時空-日本女性史再考』第3巻. (1996)
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[Publications] 千野香織: "絵や写真やテレビを見る時あなたに思い出してほしいこと" 『コ・ラボ・アート』. 4. 58-69 (1995)
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[Publications] 千野香織: "日本美術史とフェミニズム" 『芸術学がかわる。』AERA・Mook 9. 126-131 (1995)
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[Publications] 千野香織: "美術館・博物館にみるポリティクス" 『国立博物館ニュース』. 583. 3 (1995)
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[Publications] 千野香織: "台北の故宮博物院を訪ねて" 『朝日新聞』1996年2月22日夕刊. (1996)