近世・近代中国および周辺地域における諸民族の移動と地域開発

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07451082
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 森安 孝夫 大阪大学, 文学部, 教授 (70157931)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 谷口 規矩雄 愛知大学, 文学部, 教授 (20030512) ; 桃木 至朗 大阪大学, 文学部, 助教授 (40182183) ; 荒川 正晴 大阪大学, 文学部, 助教授 (10283699) ; 片山 剛 大阪大学, 文学部, 教授 (30145099) ; 濱島 敦俊 大阪大学, 文学部, 教授 (40012976)
• Keywords: 移動 / 開発 / 水利 / 商業 / 中央アジア / 華中 / 華南 / 東南アジア

Research Abstract

移動と開発をキーワードとする本課題において、各メンバーは文献資料の収集・読解・分析を行うとともに、他の資金によって実施された各領域に関する実地調査の成果も積極的に取り入れて研究を進めた。森安は、中央アジア出土文書と漢籍を駆使し、シルクロード貿易に活躍したソグド商人・ウイグル商人のネットワークを浮かび上がらせ、斡脱(オルトク)商人の起源を明らかにした。濱島は、従来の研究蓄積と集積された現地調査資料を基礎に、江南デルタの開発・定住を再検討し、特に太湖西岸に位置し、天目山系の丘陵地域と太湖沿岸の沖積低地という二類型の地勢をもつ長興県につき、その水利を再検討した。谷口は、近代には中国の代表的都市となる漢口を、明代後半の形成期に遡って考察し、漢水下流の襄河の河流の変化によって低湿地が砂州となり、そこに成化頃から人が居住し始めたこと、以後、周辺における水利田開発を基礎とする米穀生産の発展、綿花生産等の経済活動の展開につれ、該地方の中心的市場としての発展の基盤を確立したことを明らかにした。片山は、18世紀広東人社会における移住・定着の民間ルールを抽出し、同時に、国家の移住政策に従って該社会へ移住した客家人の移住・定着のあり方が、このルールとは異なるものであり、それがその後の両者の関係のあり方を大きく規定したことを明らかにした。荒川は、トゥルファン出土文書を検討し、唐がトゥルファン高昌城周辺の水利開発を積極的に推進し、その保全作業に商人や遊牧民等の非農業民・非漢人住民を恒常的に差発していたことを明らかにした。桃木は、中近世の北部ベトナムの農業開発と国際交易、土地所有を検討し、特に小農の標準経営面積、徭役制度や支配者側の税役収集システム等、従来の研究で欠落していた問題を整理した。沈は、近代上海の労働力の需要と供給について、特に焦点を上海に流入する外来人口に据えて量的に分析し、その構造を考察した。

Research Products

• [Publications] 森安孝夫: "ウイグル文字新考-回回名称問題解決への一礎石-" 『東方学会創立五十周年記念論文集』. 6月刊行予定. 1226-1238 (1997)
• [Publications] 森安孝夫: "シルクロードのウイグル商人" 『岩波講座 世界歴史』第11巻. 近刊予定.
• [Publications] 濱島敦俊: "近世江南金総管考" 『明未清初の社会と文化』(京都大学人文科学研究所). 375-413 (1996)
• [Publications] 濱島敦俊: "近世江南海神李王考" 『中国海洋発展史論文集』(台湾中央研究院)(近刊). 6. (1997)
• [Publications] 片山 剛: "清末・民国期、珠江デルタ順徳県の集落と「村」の領域" 東洋文化. 76. 163-199 (1996)
• [Publications] 片山 剛: "一八世紀の広東人社会と〓家人の移住" 塚田誠之編『(仮題)中国大陸南部における諸民族の移住とエスニシティ. (平凡社近刊). (1997)
• [Publications] 片山 剛: "中国近世・近現代史のフィールドワーク" 須藤健一編『フィールドワークを歩く』嵯峨野書院. 297-304 (1996)
• [Publications] 桃木至朗: "ベトナムができるまで" 桜井由〓雄編『もっと知りたいベトナム(第2版)弘文堂. 62-81 (1995)
• [Publications] 桃木至朗: "南から見た明清史-ベトナム経済史の場合-" 森正夫編『明清時代史の基本問題』汲古書院. (近刊). (1997)
• [Publications] 荒川正晴: "クチャ出土「孔目司文書」攷" 古代文化. 49-3. 1-18 (1997)