1997 Fiscal Year Annual Research Report
虚血後の脳内グルタミン酸濃度に及ぼす髄液内・静脈内リドカイン投与の影響
Project/Area Number |
07457347
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
太田 助十郎 秋田大学, 医学部, 講師 (90125708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 洋一 秋田大学, 医学部, 助手 (50282182)
寺田 宏達 秋田大学, 医学部, 助手 (60282183)
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Keywords | 脳虚血 / グルタミン酸 / マイクロダイアリシス / リドカイン / 局所麻酔薬 / 静脈内投与 / 大脳皮質 / 海馬 |
Research Abstract |
一過性前脳虚血中の脳内グルタミン酸濃度の変化に対し、静脈内投与したリドカインがどのように影響するかを検討した。【対象・方法】酸素/笑気/イソフルレン麻酔下に、SD雄ラットの頭蓋骨の両側に少孔を開け、グルタミン酸濃度測定用のマイクロダイアリシスバイオセンサーを脳定位的に右海歯CAlおよび左大脳皮質へそれぞれ刺入した。ラットは、リドカイン群(L群:n=8)およびコントロール群(C群:n=5)に分け、それぞれ1%リドカイン10mg/kgおよび生理食塩水1.0ml/kgを尾静脈内留置カテーテルを介して静脈内投与し、15分後に10分間の前脳虚血をつくった。一過性前脳虚血は、両側頚動脈クランプと脱血による低血圧(45mmHg)の併用で作製した。脳虚血中の海馬CAlと大脳皮質のグルタミン酸濃度は、酸素電極法によるマイクロダイアリシスバイオセンサーシステム(Model EES-800)を用いて同時に連続測定した。直腸温・脳温はほぼ37℃に保った。【結 果】脳虚血中のグルタミン酸の最大値は、海馬CAlでL群165±58(Mean±SD)μM、C群182±101μMであった。大脳皮質ではL群143±48μM、C群141±66μMであった。すなわち、海馬CAlおよび大脳皮質のいずれのグルタミン酸濃度についても両群間に有意差はなかった。【考 察】リドカインの大槽くも膜下腔投与(5mg/kg)の場合では、脳虚血中、大脳皮質のグルタミン酸濃度の上昇が抑えられることはすでに報告したが、今回のリドカインの静脈投与(10mg/kg)では、大脳皮質も海馬もグルタミン酸濃度の上昇は抑えられなかった。膜安定化作用をもつリドカインは血液脳関門を通過しやすい性質を有するが、脳虚血で生じるグルタミン酸の上昇を抑えるのに有効な脳実質各部位のリドカイン濃度は不明である。そして少なくとも、今回のような用量で静脈内bolus投与では有効な血中濃度には達していないことを示す。
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