1996 Fiscal Year Annual Research Report
n-3脂肪酸含有リン脂質の機能性食品としての利用法の検討
Project/Area Number |
07558002
|
Research Institution | HYOGO UNIVERSITY OF TEACHER EDUCATION |
Principal Investigator |
増沢 康男 兵庫教育大学, 学校教育学部, 教授 (30119622)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 恵津 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (70214773)
渡部 和郎 相模中央化学研究所, 副主任研究員
矢沢 一良 相模中央化学研究所, 主任研究員
辻 悦子 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (70192193)
|
Keywords | n-3脂肪酸 / ドコサヘキサエン酸 / リン脂質 / 栄養 / 酸化安定性 / ヒドロペルオキシド |
Research Abstract |
1.高n-3脂肪酸含有リン脂質による脂肪酸組成改変作用 前年度の実験結果の再現性を確かめるため、イカ由来高DHA含有リン脂質をラットに与え、その脂肪酸改変作用を、高DHA含有トリグリセリド(TG)と比較した。両者はほぼ同様の作用を示したが、血漿リン脂質、赤血球PEのDHA及び、血小板PE,赤血球PEのEPAを増加させる作用はリン脂質の方が強いことが確かめられた。また血小板PE、PCおよび肝臓PEのアラキドン酸を減少させる点においても、リン脂質型の方が強い作用を示した。以上のことから、n-6含有リン脂質は血漿・血液細胞のリン脂質構成脂肪酸のn-6/n-3比を減少させ、血栓予防などにおいて、TGより効果的に作用する可能性が示された。なお前年度TGより強いと報告したn-3含有リン脂質による血清コレステロール減少作用は、再試験の結果、TG型の作用と有意な差がないことがわかった。 2.高n-3脂肪酸含有リン脂質の酸化に対する安定性 構成脂肪酸がDHAであるリン脂質(DHAーリン脂質)の酸化安定性を、同じ脂肪酸を持つトリグリセリド(DHA-TG)と比較した。酸化安定性は、生成した脂質ヒドロペルオキシドをHPLC-CL法で、また残存脂肪酸エステルをGLCで測定することにより行った。乾燥状態、恒温で自然空気酸化した場合、DHA-PLよりのみかけのヒドロペルオキシドの生成量はTGの1/100程度であったが、残存脂肪酸の測定から、空気酸化による半減期は、TG型の1/10以下であり、DHAリン脂質の酸化安定性はTG型より非常に小さいことがわかった。この傾向は脂肪酸としてリノール酸を持つリン脂質とトリグリセリドの比較でも確かめられた。脂質の空気酸化は全てヒドロペルオキシドの生成を経由していると考えられることから、リン脂質ヒドロペルオキシドの生成速度は早いものの、分解も非常に早くヒドロペルオキシドとしての存在時間は小さいと考えられた。 3.結論;脂肪酸の種類のみに依存して発現されると考えられている酸化安定性(食品として安定性)、栄養的効力が、n-3脂肪酸がどのようなエステルとして存在しているかによって異なる場合があることがわかった。n-3脂肪酸含有リン脂質は、酸化安定性が低く、食品として扱うときにはトリグリセリド以上の注意を必要とするが、ヒドロペルオキシドとして摂取される割合はトリグリセリドよりむしろ小さいと考えられる。またn-3含有リン脂質は血小板などのn-6/n-3比を減少させる作用を通して、トリグリセリド型などより効果的な機能性食品として使用できる可能性が示された。
|