1996 Fiscal Year Annual Research Report
前期旧石器時代の石器技術伝統の解明-袖原3遺跡と上高森遺跡の比較研究を通じて
Project/Area Number |
07610406
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
梶原 洋 東北福祉大学, 社会福祉学部, 助教授 (80161040)
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Keywords | 前期旧石器 / 上高森遺跡 / 袖原3遺跡 / 両面加工石器 / アシューリアン / 原人の行動様式 / 移動 / 補給 |
Research Abstract |
前期旧石器時代の石材と石器群の形成との関連を探る目的で、上高森遺跡と袖原3遺跡で調査が実施されてきた。宮城県の上高森では、約60万年前の層から両面加工石器を中心とする石器群と世界で最古で初めての石器を15点埋納した遺構などが発見された。その外約40万年前の二つの文化層からも、ハンドアックスとクリーバーに似た両面加工石器を中心とした石器群が発見されている。袖原3遺跡では、1996年まで三回の調査が行なわれた。その結果、(1)合計6枚の生活面が確認された。最下層の32層から現在のところ日本海側最古の3点の石器が出土した。(2)23層上面出土の17点の石器群(第5文化層)は、貞岩や流紋岩製の築状石器(両面加工石器)が3点、貞岩製の小形両面加工尖頭器が1点、貞岩・瑪瑠・玉髄製スクレイバー、剥片が13点からなる。この石器群の特徴は、50万年前以前の上高森遺跡の両面加工石器群と類似する要素と碧玉、玉髄製の小形石器群が両方の要素が複合している点である。の年代は、SD1軽石との関係から30万年前より古いと考えられる。このほか21層上面から、篦状石器(両面加工石器)2点、剥片3点が出土している(第4文化層).新たに確認された第3文化層から、両面加工石器を中心に7点の石器が発見されている.(5)今回までの発掘で、貞岩産地の山形とそうでない宮城県の前期旧石器時代の石器群の様相の一端が明らかになった.両面加工石器はアフリカや中近東のアシューリアン遺跡のハンドアックスと・クリーバーの組合わせと類似し、東アジアにもアシューリアンの伝統が波及していた可能性について新たな材料を提供した。この両面加工石器は、石材環境にかかわりなく、袖原にも上高森にも存在する。石器群の形成に関しては、激しい移動に伴う石材の獲得地でのほとんど製作が行なわれること、石器は、移動の途中で使用されること、残された遺跡は、補給の為石器を残していった場所であること、何らかの象徴的な行為が存在したらしいことなどの原人の行動様式についての新たな仮説をもたらした。
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Research Products
(2 results)