Research Abstract |
平成7年度の研究計画にしたがい,これまで関係図書を購入し,また8,10,11,1月に東京や大阪に出張し,資料収集を行った。今年度は,研究目的に記載の(1)“人権"概念の普遍性や不可分性を否定し,非選択性を強調するアジア諸国の主張について,(1)非同盟諸国会議,(2)世界人権会議アジア地域会合,(3)世界人権会議のような国際会議の場で表明されたアジア諸国の“人権"概念理解の分析を実施した。また,APEC,ASEAN地域フォーラム(ARF),アジア欧州首脳会議(ASEM)などの場を通じて,アジア・太平洋における地域協力が急速に進展しつつあり,こうした場で人権問題が政府間で語られる場面が徐々にではあるが増えつつある。今年度は,こうしたあらたな動きにも焦点をあて,従来の国際的人権保障の方法との関連で,分析を行った。 なお,8月下旬から約5週間,オーストラリア・シドニーのニュー・サウス・ウェールズ大学法学部に客員研究員として滞在し,同学部で資料を収集し,同学部等の研究者,キャンベラやシドニーのオーストラリア連邦政府職員・人権委員会関係者・裁判官,ならびに人権NGO関係者延べ約30名と“人権"概念の普遍性やアジア諸国のこれに対する挑戦等に関し討論を重ねた。また,10月第1週には,中国・上海の上海社会科学院を訪問し,同研究院の法学者と中国における人権状況や中国政府の“人権"概念理解等につき意見交換をする機会があった。 上記のような研究や外国出張を通じて,“人権"概念の普遍性・不可分性・非選択性につき分析する場合,政府とNGOとの主張の背景に立ち入って分析すべきこと,ならびに一国内でも政治・経済エリートとマイノリティ・社会的弱者集団に属する人びととの間の立場の違いによる主張の相違に十分に留意すべきことを改めて痛感した。
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