1996 Fiscal Year Annual Research Report
戦前都市社会事業の発展と「中間層」の「生活協同化」に関する研究
Project/Area Number |
07630058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
青木 郁夫 阪南大学, 経済学部, 教授 (80184026)
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Keywords | 生活の「価値化」 / 協同組合 / 産業組合 / 都市中間層 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度から引き続き、地方都市史を繙く事と、いま一度わが国における協同組合運動の中心部分を担った産業組合運動の歴史、およびその中心人物である千石興太郎の思想をふりかえる作業を行った。ここでの地方都市史の課題は、第一次世界大戦前後、とりわけ戦後恐慌後における生活史、なかんずく生活の「価値化」といわれる構造転換、そのなかでの「中間層」以下の生活の「協同化」の実相を追体験することであった。こうした時代状況については、すでに昨年度論文にして公表しているが、このことはけっして東京、大阪といった大都市に固有のことがらではなく、この間実証のための個別具体としている青森、須崎、倉吉といった地方都市においても、そこに色合の違いがあるといえども、同様の事態が進展しつつあったことが確認された。しかも、地方都市ほど、たとえその地域全体を覆っていなかったとしても、地域経済における資本形成の問題も含めて、千石興太郎などが提起する「産業組合主義的経済組織」に類する状況を呈していたといってもよい。 もう一つの作業である産業組合運動史については、とりわけ運動の思想的バックボーンとなった千石興太郎についての考察が中心的作業となった。1925年からの振興刷新運動や、33年からの拡充五ケ年計画などの運動戦略提起者である千石の中心思想、理念は、「産業組合主義経済組織」の形成であった。この考え方を検討する際には、営利を目的に運動し、諸種の弊害を伴う「資本主義的経済組織」に対抗しながら、しかも「社会主義的経済組織」ではない、いわば第三の道を選択しようとする思想が、どの程度運動の担い手たちをとらえていたか、またその後の有馬頼寧らの農村革新協議会などとの関係を含んで、歴史的にどのような意味をもっていたかを今日的状況から再評価しなおすという課題がある、ということが明らかとなった。 研究作業としては、「日本無産者医療同盟関係資料」を復刻するということも行った。
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Research Products
(1 results)