Research Abstract |
近年,小学校には多目的オープンスペース(以後,OSと略す)を持つ学校が急速に増加しつつある。これは,従来のクラスルーム単位の教室ではできにくかった,ティーム・ティーチングや個別化・個性化に対応した学習,また,低学年の生活科のように,物を作る・調べる,ごっこ遊びなど体験的学習活動を通じて学ばせる教育の現代化に対し,教室まわりの空間計画として提案され,これを助成する形で制度が整備された結果である。 このような背景から一般にOSの有効性が認知されつつあるが,教室とOSとの間仕切りを無くしたために,情報伝達手段としての掲示用スペースが減少したとの指摘も多い。その上,OSをもつ学校に限らず,これからの学校教育では情報伝達手段を活用する学習環境作りが大切であると主張する教育関係者も多い。 そこで教育環境の現代化に対応する掲示や展示スペースのあり方はどうあるべきか,どのように計画すべきか,その視点を建築計画的に提示する必要がある。このため実際行われている掲示・展示を多角的に分析し,教育上必要な掲示・展示量を求め,掲示・展示に必要な知見を求めることを本研究の目的とする。 以上の背景から,小学校で掲示されている実態調査と教員の掲示に対する意識を明らかにするため,下記調査を行った。いずれも調査対象は掲示を積極的に行っているOSを持つ学校と片廊下従来型の学校である。 対象校は,(1)片廊下従来型の小学校3校,(2)従来型校舎をリモデルによりOSを確保した小学校2校,(3)建設当初からOSを設置した小学校6校を選定し,延べ17校分(99クラス)の実態を調べた。なお,教員の掲示に関する意識調査は,調査協力が得られた10校,クラス担任の教諭106人(回答率68.2%)に対し行った。 この結果,今年度は教室まわりの掲示の種類・内容,掲示場所,掲示利用率,最大掲示時期,掲示と施設の課題を把握し,その中から得られた知見をもとに教育上必要な掲示量を推計することができた。
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