Research Abstract |
教育環境の現代化に対応する掲示や展示スペースのあり方を,壁,床,天井など校舎の内部空間がどうあるべきか・計画すべきか,その視点が建築計画的に問われている。そこで本研究では小学校における掲示の実態をプランタイプ・部位別に掲示の種類・内容,掲示場所,掲示利用率,最大掲示時期,掲示と施設の課題を実態調査し,そこから得られた知見をもとに掲示量と掲示に必要な壁面量を推計し,掲示に優しい仕上げのあり方を提示することができた。以下そのまとめである。 1)普段教室まわりでは,(1)教師は掲示のねらいを「学習意欲の向上」に置く。(2)少なくとも全児童の作品が2作品(2教科)掲示できないと,掲示スペースの不足を訴える。(3)掲示量は時期によって変動するが,2学期の9〜11月が最も多い。(4)教室まわりでは掲示物の内容は14種類に大別できる。(5)教科では国語(習字,作文)や図工の作品掲示頻度が高い。(6)掲示の実態から推計すると,クラス当たりの最大掲示量は40m^2で,これに必要な壁面量は195m^2必要となる。 2)特別教室・職員室まわりでは,(1)普通教室の壁面積に対する平均掲示率は15%に対し,特別教室の最高は9%,平均4%の掲示率である。掲示物の種類としては,児童の作品,教具・製品,装飾物,である。(2)職員室の掲示率は平均4.2%,最高5.9%,最低2.4%である。(3)特別教室のなかでは,家庭科室が多く平均7.4%,続いて音楽室が平均4.6%,図工室3.5%,理科室2.9%であった。 3)廊下まわりでは,(1)廊下まわり全体の平均掲示率は4.8%であるが1階の廊下まわりの掲示が多く,階数が上がるごとに掲示率は減る。(2)掲示物の種類は児童の作品が最も多く,特に管理諸室や昇降口では賞状・トロフィーの展示・掲示が多い。 4)掲示可能な総壁面と壁仕上げについては,(1)教室まわりの6割の壁面は掲示可能である。しかし,掲示手段(画鋲,テープ,マグネット)によって,掲示のし易さがことなる。木製の壁面仕上げが最も掲示に適しているが,現状はコンクリートの壁にペンキ仕上げが多いことが分かった。
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