Research Abstract |
我々は,任意の2個の細胞をレーザーを用いて捕捉・接触させ,パルスレーザーにて両細胞にピンホールをあけることにより,融合させる方法を開発した.この方法を用いて,ヒト型の蛋白合成能や代謝能を有する融合細胞を作成するための基礎的研究を行った.平成7年度までに,マウスミエローマ細胞(SP2)とマウスリンパ球の細胞融合に成功し,この融合細胞がIgGを産生することを確認した.しかし,この方法には,いくつかの未解決の問題があることが判明した.このため,平成8年度は,初期の計画を変更し,以下の研究を行った.(1)無菌操作下での細胞融合率の向上:無菌操作を可能にする為に,パルスレーザーを下方においた対物レンズから照射するシステムを開発したが,照射されたレーザーがエマルジョン,カバーグラスと二つの屈折系を通過することにより,パルスレーザーを照射する際に,焦点が狙った部位からずれ,細胞の融合率が低下することが判明した.このずれを補正する画像システムを開発し,SP2どうしの細胞融合率が従来20%であったものを40%まで高めることができた.(2)細胞の形態による照射時における接触状態,パルスレーザーの照射条件の検討: i)細胞どうしの接触状態,細胞膜の硬さ,核の大きさ,細胞質の量等も融合率に影響を与え,SP2のような細胞質の豊富な細胞どうしの細胞融合は容易であるが,リンパ球のように細胞質が少なく,ほとんど核だけで細胞膜の硬い細胞どうしの融合は比較的困難であることが判明した.ii)マウス肝実質細胞のような大型の細胞を捕捉するためには,SP2に比べ,約5倍のレーザー出力を必要とすることが判明した.また,細胞どうしの接触状態,パルスレーザーの照射条件を変化させ,融合の条件を検討したが,融合に最適な条件設定はまだ得られていない.なお,マウスの肝実質細胞とFHCとの融合細胞,ヒト肝細胞とマウスFHCとの融合細胞の作成までは至らなかった.
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