Research Abstract |
(目的)FISHを用いて染色体異常の解析を行い生物学的悪性度の各指標(核DNA量,PCNA,p53蛋白発現),臨床背景因子と比較検討し臨床応用の可能性について評価することを目的とした.(対象)1986年1月から1989年12月までに金沢大学第一外科学教室で外科的切除を行った原発性非小細胞肺癌症例パラフィン包理され保存されている74例を対象とした.男性58例,女性16例であり,平均年齢は64.7歳であった.肺癌取り扱い規約による病期分類の内訳は,I期19例,II期11例,III期29例(IIIA22例,IIIB7例)IV期15例であり,組織別では腺癌40例,偏平上皮癌は34例であった.(方法)1.FISH法による第17番染色体数の測定 2.p53に対する免疫組織染色法 3.PCNA免疫組織染色法 4.フローサイトメトリーによる核DNAの測定を行った.なお,染色体異常の評価はWaldmanらに準じ,Centorometic copy number(CCN)及びFIST spots meanを算定した。(結果)第17番染色体異常は74例中22例(29.7%)に認められた.CCN1(monosomy)症例は7例(9.5%),CCN3(trisomy)症例は15例(20.3%)であった.CCN1andCCN3では,病期,T因子,N因子,組織型,p53蛋白発現,PCNA標識率で有意差を認めた.CCN1はM因子で,CCN3では,病期,N因子,組織型,p53蛋白発現,PCNA標識率で有意差を認めた.核DNA量別では,CCN1and3,CCN1とも有意差はなかったが,Anuploid症例に染色体数的異常が多い傾向を認めた.(まとめ)肺癌におけるさらなる染色体の構造異常の検討,癌遺伝子・細胞増殖能との関係などの検討を加えることで,癌の進退,悪性度を含めた臨床への応用の可能性が示唆された.
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