1996 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族アミン曝露者に発生する尿路上皮腫瘍の分子生物学的研究
Project/Area Number |
07671749
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Research Institution | Wakayama Medical College |
Principal Investigator |
新家 俊明 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教授 (00073718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 秀章 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (60264496)
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Keywords | 尿路移行上皮癌 / 芳香族アミン / 職業癌 / Glutothion S-transferase / N-acethyltransferase / p53腫瘍抑制遺伝子 |
Research Abstract |
和歌山市においては第二次大戦後の復興途上において、輸出用の染料中間産物である芳香族アミンの大量生産が行われた時期があった。この製造にたずさわった従業員のなかから不幸にして高頻度に尿路上皮癌患者が発生している。教室ではこの"職業性"尿路上皮腫瘍症例を疫学的に解析し自然発生尿路上皮腫瘍と比較してさまざまの点で生物学的行動が異なることを報告してきた。しかし、現在のところ従来の病理組織学的検査ではこの職業性尿路上皮腫瘍と自然発生尿路上皮腫瘍との生物学的行動の差を特定することはできない。本研究は分子生物学的方法を用い職業性腫瘍と自然発生腫瘍との差を証明することを目的に行った。 1.芳香族アミン曝露者における解毒酵素トランスフェレース遺伝子の検討:芳香族アミン曝露者において宿主特異的因子であるGlutathion S-transferase(GSTM1)遺伝子欠損をPCR法により検討した。腫瘍発生者にGSTM1遺伝子欠損者の多い傾向をみとめた。職業性腫瘍発生に関わる労働環境因子とGSTM1遺伝子欠損との相互関係の検討では、小規模工場での就労や就労年数の長さなどの労働環境因子がGSTM1遺伝子欠損を凌駕する強い関わりを示した。今後、芳香族アミンに対する特異的解毒酵素と考えられるN-acethyltransferaseについて同様の検討を行って行きたい。 2."職業性"尿路上皮腫瘍におけるp53遺伝子の突然変異の検討: p53腫瘍抑制遺伝子の突然変異は尿路上皮癌においてもしばしば発生することが知られている。現在、職業性尿路上皮癌の変異型p53遺伝子の過剰発現を検討し、PCR-SSCP法により職業性尿路上皮腫瘍に特異的なp53遺伝子点突然変異や塩基対の欠失を証明することにより、自然発生腫瘍との間の差を明らかにするべく準備を行っているが研究年度内には達成できなかった。
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Research Products
(1 results)