Research Abstract |
看護をめぐる状況は,社会の変化の中で大きく様変わりし,今,施設内看護から在宅看護へという大きな流れの中にある。看護サービスを独自の経済的な財として位置づけ,これを医療サービスから独立させ,独自に経済学の視点から論じていくことが求められる時代に入ったといえよう。 本研究の目的は,「日本の診療報酬制度における看護サービスの経済的評価」を検討することである。その目的に至る前提として,本年度は,まず,「看護」または「看護サービス」の定義づけとその経済的特性に注目した「看護サービス」についての理論的解明を試みた。 看護の定義を歴史的経緯を踏まえて検討した結果,現在のわが国における看護は独立・専門性への移行期にあると判断した。そして,通常の市場とは異なる特殊な看護市場における看護サービスの経済的特性について検討し,看護サービスは公共財・私的財の両面を併せ持つ複合財であり,その経済的特性は多元的であるという点を明らかにした。その上で,“看護"とは,「患者および家族という消費者が必要とする,すなわち,患者のニーズに対し,看護婦および准看護婦という生産者が提供する看護サービスという財を,社会保険・老人保健診療報酬・医科点数表に定める全国一律の公定価格,または,自由市場における均衡価格で患者が購入する財である」と定義した。 次に,診療報酬制度における「看護料」の設定について検討した。結果,診療報酬制度における「看護料」は看護独自のサービスの対価として設定されたものである。しかし,看護業務のうち,診療の補助等に係る看護サービスに対する報酬の設定は,個々の診療行為の点数の中に埋没し,看護独自のサービスに係る価格が不明確であったり,その価格を特定することが困難であるという点を問題として取り上げた。 このように,今後も,当初の研究実施計画に沿って研究を展開していく予定である。
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