1995 Fiscal Year Annual Research Report
東京府(都)下における私立青年学校の教育実態に関する基礎的研究
Project/Area Number |
07801040
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
佐々木 尚毅 立教大学, 文学部, 助手 (70222007)
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Keywords | 私立青年学校 / 戦時下 / 国家総動員法 / 東京 |
Research Abstract |
年度当初に計画した研究目的のうち、私立青年学校の運営実態や教育実態を明らかにする基礎史料の蒐集という第一の目的については、ほぼ当初の計画通りの成果がえられたと考える(今後もこの作業は継続される)。その結果、以下のことが明らかになった。まず、青年学校義務化の閣議決定を機に増加した私立青年学校は、実際に義務化が実施されるやその統廃合が始まった。その背景には、強大な権限を国家に与えてしまう委任立法である国家総動員法の影響があった。国家総動員法第6条関係の勅令の発動により、軍需関連業種以外の「不急」産業へは従業員の「供給」が制限され、そのため設置母体自体が経営危機に陥り、あるいは生徒数の減少からその学校を廃校にしていた。その一方で軍需関連業種に変更した企業は、同法13条の規定により多数の青年学校就学対象年齢の従業員が供給され、事業規模、学校規模を拡大していた。いわば生徒の入学は同法により統制されていたのであり、この点が公立青年学校と異なる点である。また、こうした軍需関連業種の企業が設置する私立青年学校の校長には、予備役や現役の高級軍人が採用されていく傾向が認められた。 本年度計画の第二の目的「産業政策との関連で私立青年学校を位置づける」という目的については、当初、校長に採用された技術系の軍人の専門とその学校の設置母体企業の生産品との関連を分析することを通して明らかにする計画であった。しかし、履歴書には各人の「兵科」が記されているのみであり、詳細な検討のためには各人のより詳しい経歴を明らかにする必要がある。このため平成8年度以降の研究計画に校長の軍人としての経歴を調査する作業を加える。
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