1996 Fiscal Year Annual Research Report
CP対称性の破れと物質起源の実験的検証法の理論研究
Project/Area Number |
07804016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
栗本 猛 富山大学, 理学部, 助教授 (10195563)
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Keywords | CP対称性 / CPの破れ / B中間子 / 小林・益川行列 / 左右対称模型 / 反物質 |
Research Abstract |
物質と反物質の間の非対称性(CP対称性の破れ)の研究は、我々の身の回りに物質のみが存在しなぜ反物質がほとんど存在しないのかを究明するために必要なものであり、また現在の素粒子標準模型を越える次の理論的枠組みを探求する上においても重要である。今年度の本研究では、標準模型を拡張した左右対称模型においてCP対称性の破れが実験的にどのように観測されうるかを中心に研究を行った。また各基本相互作用におけるCP対称性の破れの現れ方についてもまとめを行った。 現在建設中のB中間子工場での実験はB中間子系でのCP対称性の破れの観測を第一目的としている。標準模型においてそれがどのように見えるかはよく研究されているが、標準模型を拡張した場合にその結果がどう異ってくるかも詳細に調べておくことで、今後の実験結果の検討から標準模型の次の理論を探ることができる。左右対称模型では弱い相互作用を媒介するWボソン(右巻きWボソン)が新たに一種類加わり、CP対称性を破る可能性が標準模型よりも多くなる。本研究においては、まず現存する実験データから右巻きWボソンに対する質量の制限を新たに求め、B中間子混合を実験と矛盾なく説明するためには大部分のパラメータ領域において右巻きWボソン質量は約1TeV以上であるべきことを求めた。さらにそれほどの重い質量を有していても右巻きWボソンの媒介する相互作用によるCPの破れへの影響は少なくなく、標準模型における予想を数十%以上変更する可能性のあることを指摘した。またB中間子物理におけるいわゆるユニタリ三角形の角度の実測値が、左右対称模型の場合は180度にならなくなる場合があり、超対称標準型等の他の標準模型の拡張とは区別しうることを指摘した。
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