1995 Fiscal Year Annual Research Report
ネコ大脳皮質SI顔面口腔領域の破壊が咀嚼運動と運動野ニューロン活動に与える影響
Project/Area Number |
07838039
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
平場 久雄 日本大学, 歯学部, 講師 (00156689)
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Keywords | 咀嚼運動 / 大脳皮質 / SI口周囲部投射部位 / SI舌投射部位 / 破壊 / 食物摂取咀嚼行動の変化 / 覚醒ネコ |
Research Abstract |
我々は、覚醒ネコ大脳皮質の第1次体性感覚野(SI)、運動野(C、P、M)と咀嚼野(MA)で顎顔面口腔領域に末梢受容野をもつ咀嚼運動関連ニューロン(MRN)を調べてきた。その結果、咀嚼運動は運動野のPやMで開始され、運動の状態をSIでモニターレ、MAで口腔状態を知覚し、フィードバックされた感覚情報はCで統合され、円滑な顎運動が実行されていると推察した。また、各領野のMRNは共通して口周囲部や舌から入力を受けるのが非常に多く認められた。今回は咀嚼運動時のSIの役割をさらに明確にするため、SI口周囲部と舌投射領域を破壊し、咀嚼運動への影響を調べた。実験は7匹の成猫を用い、無麻酔で頭部を固定し、一定量の"魚のすり身"(約1.8g)を小さな木製のスプーンで摂取させ咀嚼運動を行わせた。破壊は、ニューロン活動と薬物投入が同時に行える同芯軸型電極で破壊部位を確認後、0.1%カイニン酸2μlを微量注入し、SIの口周囲部(PL)と舌(TL)投射部位を限局的に破壊し、破壊後の食物摂取・咀嚼行動変化を約40日後まで調べた。計測は、食物を口周囲部に接触させ、咀嚼運動を誘発するまでの時間(咀嚼開始時間)、一定量の食物を舐め終るまでの時間(食物摂取時間)、食物を与えた後一連の咀嚼運動が終了するまでの時間(咀嚼終了時間)と咀嚼中の嚥下回数と各嚥下間隔時間を破壊前後で比べた。破壊後、PLネコは咀嚼運動開始の遅れ、食物摂取時に餌が口腔内より飛び出すことがしばしば認められた。食物摂取時間、咀嚼時間、嚥下回数は、破壊直後より経日的に徐々に延長あるいは増加した。また、TLネコは破壊直後より食物摂取時間、咀嚼終了時間、嚥下回数が急速に延長や増加を示した。しかし、咀嚼運動開始の遅れ、餌がこぼれることは認められなかった。一方、嚥下間隔時間は両破壊でも変化しなかった。この現象は、口周囲部や舌からの入力を受けるSIニューロンの障害が、円滑な咀嚼実行を阻害していると推察される。
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