1996 Fiscal Year Annual Research Report
突厥・ウイグル・モンゴル帝国時代の碑文及び遺蹟に関する歴史学・文献学的調査
Project/Area Number |
08041014
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森安 孝夫 大阪大学, 文学部, 教授 (70157931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ボルド L. モンゴル科学アカデミー言語文学研究所, 言語部長
メネス G. モンゴル歴史博物館, 研究員
オチル A. モンゴル科学アカデミー歴史研究所, 所長
バットルガ T. モンゴル科学アカデミー, 助手
松井 太 日本学術振興会, 特別研究員
中村 淳 日本学術振興会, 特別研究員
大澤 孝 大阪外国語大学, 助教授 (20263345)
片山 章雄 東海大学, 文学部, 助教授 (10224453)
吉田 豊 神戸市外国語大学, 文学部, 助教授 (30191620)
杉山 正明 京都大学, 文学部, 教授 (00127094)
林 俊雄 創価大学, 文学部, 教授 (50132759)
松田 孝一 大阪国際大学, 経営情報学部, 教授 (70142304)
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Keywords | 突厥 / ウイグル / ソグド / モンゴル帝国 / 遺蹟 / 碑文 / 都市 / トルコ |
Research Abstract |
1.突厥 (1)今年度実地調査したキョルテギン遺蹟・ビルゲ=カガン遺蹟オンギ遺蹟・イフ=ハヌイ=ノール遺蹟、ならびに数年前に予備調査したキュリ=チョル遺蹟・トニュクク遺蹟など、突厥時代の代表的な遺蹟をほぼ網羅した結果、いずれも盆地状草原の中央に立地し、きわめてよく似た景観を持っていることが判明した。すなわち、石槨とマウンドをもつ主廟はなだらかな東向きの斜面を見下ろす位置にあり、主廟から東方へ向かってまず石人・石羊などと碑文が立ち並び、そこから東の方向にバルバル石柱が一列に延び、さらにその先には川がある。現在は倒れたり引き抜かれたりしているが、本来のバルバルの数は予想以上に多く、かつ整然としており、中には短いルーン文字銘やタムガの刻されていたものさえあった。今後、バルバルの意味を再検討する際の有力な手がかりとなる。 (2)キョルテギン碑文については、亀趺にも銘文があることを発見した。現在解読中。 2.ウイグル (1)いずれも碑文をもつカラ=バルガスン遺蹟・タリアト遺蹟・シネウス遺蹟を調査した結果、突厥時代の碑文をもつ遺蹟とはかなり性格が異なることが判明した。特に顕著なのは、突厥期の遺蹟がすべて埋葬施設であったのに対し、ウイグル期の遺蹟は埋葬とは関係ないように見える点である。 (2)ヘリコプターにより広大なカラ=バルガスン遺蹟の空中撮影を行ない、モンゴル草原における最初の都市の遺跡の全容を把握することができた。 (3)カラ=バルガスン碑文は、トルコ語・ソグド語・漢文の3カ国語で書かれているが、拓本だけではその相互の位置関係が不明であった。それが今回の実地調査により判明した。その結果、現在のテキストの分量から、これまで建碑者の父の功績を讃えるものであると考えられてきた本碑文も、実際には建碑者本人に父以上のスペースが割かれていたのに、それが剥落したためにテキストの見かけの分量が減少したことが判明し、往年の謎は氷解した。 (4)タリアト・テス・シネウスの3碑文については、拓本をモンゴル文化庁の許可を得て初めて日本に将来することが出来た。それに基づいて研究を進め、従来の読み誤りを訂正しつつある。 3.モンゴル帝国 (1)シャーザン=ホト、ホクシンテ-ル遺蹟、ハルフルハン遺蹟については、従来十分な研究報告はなされていなかったが、いずれもきわめて大規模かつ重要な遺蹟であることが今回の調査により認識された。この3遺蹟に共通する特徴として、緑釉瓦に加えて、遺蹟内部ないしはその周辺に穴状遺址をもつことが、新たに判明した。さらにホクシンテ-ル遺蹟については、遺蹟の規模・形状等に関するこれまでの報告の誤りを発見し、その訂正のため新たな見取図を作成した。 (2)カラコルム遺蹟・エルデニ=ゾ-寺院内のモンゴル語・漢文碑文を採択し、解読研究を進めつつある。とくに、発表されていた図版では解読不能だったモンゴル文テキストが、この現物調査と拓本によって解読できた。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] 森安 孝夫: "ウイグル文字新考-回回名称問題解決への一礎石-" 東方学会創立五十周年記念東方学論集(東方学会,東京). 1238-1226 (1997)
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[Publications] 森安 孝夫: "シルクロードのウイグル商人-ソグド商人とオルトク商人の間-" 岩波講座世界歴史第11巻(岩波書店、東京). (1997)
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[Publications] 松田 孝一: "宋元軍制史上の探馬赤(タンマチ)問題" 宋元時代史の基本問題(汲古書院,東京). 153-184 (1996)
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[Publications] 松田 孝一: "宋元軍制の諸論点" 国際研究論叢(大阪国際大学紀要). 9. (1996)
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[Publications] 林 俊雄: "遊牧騎馬民俗スキタイの侵入" 講座 文明と環境5:文明の危機-民俗移動の世紀-(朝倉書店,東京). 35-48 (1996)
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[Publications] 林 俊雄: "草原遊牧文明は成立するか?" 講座 文明と環境2:地球と文明の画期(朝倉書店,東京). 160-171 (1996)
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[Publications] 林 俊雄: "モンゴリアの石人" 国立民族学博物館研究報告. 21-1. 177-283 (1996)
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[Publications] 林 俊雄: "ホレズムの遺蹟" 沙漠研究. 6-2. 27-36 (1996)
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[Publications] 大澤 孝: "8世紀初頭のイェニセイ・キルギス情勢-バルス=ベグの出自と対東突厥征伐計画をめぐって-" 史朋. 28. 1-24 (1996)
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[Publications] 中村 淳: "チベットとモンゴルの邂逅-はるかなる後生へのめばえ-" 岩波講座世界歴史第11巻(岩波書店、東京). (1997)
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[Publications] 杉山 正明: "モンゴル帝国の興亡(上)-軍事拡大の時代-" 講談社, 233 (1996)
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[Publications] 杉山 正明: "モンゴル帝国の興亡(下)-世界経営の時代-" 講談社, 281 (1996)
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[Publications] 杉山 正明: "耶律楚材とその時代" 白帝社, 372 (1996)