1996 Fiscal Year Annual Research Report
韓国社会における都市化の過程に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
08041047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 亞人 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50012464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兪 明基 慶北大学校, 人文科学大学, 助教授
金 良柱 培材大学校, 世界地域学部, 助教授
大野 祐二 (財)民族学振興会, 研究員
洪 性翕 ソウル大学校, 社会科学大学, 講師
本田 洋 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助手 (50262093)
李 鎮栄 名桜大学, 国際学部, 専任講師 (30269170)
鈴木 文子 島根大学, 教育学部, 助教授 (40252887)
秀村 研二 明星大学, 日本文化学部, 専任講師 (60218724)
岩本 通弥 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60192506)
崔 吉城 広島大学, 総合科学部, 教授 (80236794)
吉田 光男 東京大学, 文学部, 教授 (70166974)
嶋 陸奥彦 東北大学, 文学部, 教授 (30115406)
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Keywords | 韓国 / 日本 / 都市化 / 過疎化 / 人口変動 / 文化人類学 |
Research Abstract |
本年度に実施された調査研究の結果、韓国における都市化にともなう社会変動に関して、以下のような知見と展望が得られた。1.近世・近代史料、文献・統計資料の収集と予備的な分析から、身分・階層の違いにより人工移動のパターンに顕著な違いがあることが明らかになった。2.観察と聞き取りに基づく現地調査から、主として以下の諸点が明らかになった。(1)大都市郊外居住の地方出身者の間には、出身地域による住み分け現象、生活苦による同伴自殺の示威的な性格など、都市貧民特有の適応/不適応現象が見られる。(2)都市における人間関係や儀礼生活は、いわゆる伝統的な社会規範や文化的様式に立脚しながらも、新しい要素を取り込み都市的条件に適応する形でかなり柔軟に組み替えられている。(3)大都市近郊農村の宅地化と新都市建設の過程では、村落的な諸社会組織の解体が顕著に進む一方で、親族集団の再強化、旧住民の主導下での村落教会の都市教会化など、旧住民による主体的な適応戦略も見られる。(4)大都市周辺部への都市域の拡大にともない、旧都市域から新都市域への人口の再移動現象もおこっており、その社会的影響も徐々に現れつつある。(5)ソウル・大邱のような大都市とは異なり、南原・安東等の地方小都市においては、都市区域とその周辺の村落地域との間に社会的・経済的に緊密相互交渉が見られ、それが都市化過程での社会変動を特徴付ける要因の一つになっている。(6)近年、住宅開発や観光開発の波が地方にも及ぶにいたり、地域に関連付けられる文化伝統の再構築や祝祭的行事の開発といった現象も見られるようになっている。(7)農村と漁村、陸地部と島嶼部の間では、人口移動のパターンや同郷者のネットワーク形成に顕著な違いが見られる。3.以上の成果をもとに、次年度以降も現地研究を継続し、より具体的かつ包括的なケーススタディーの集積を目指す。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 吉田光男: "「1663年漢城府北部戸籍に見える身分標識」(仮題)" 朝鮮史の史的展開と東アジア編集委員会(編)『朝鮮史の史的展開と東アジア』,山川出版社. 印刷中. (1997)
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[Publications] 本田洋: "「文化伝統の再構築と地域観念-韓国社会における文化伝統の動態に関する予備的考察」" 『第50回日本人類学会・日本民族学会連合大会研究発表詳録』. 117-117 (1996)
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[Publications] 本田洋: "「二重構造モデルと現代韓国農村社会」" アジア・アフリカ言語文化研究所通信. 88. 67-68 (1996)
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[Publications] 伊藤亜人: "アジア読本韓国" 河出書房新社, 330 (1996)
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[Publications] 崔吉城: "韓国民俗への招待" 風響社, 302 (1996)
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[Publications] 嶋陸奥彦: "変貌する韓国社会" 第一書房(印刷中), (1997)