1997 Fiscal Year Annual Research Report
サクラソウをめぐる生物間相互作用-その生態的・進化的意義の検討
Project/Area Number |
08304040
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鷲谷 いづみ 筑波大学, 生物科学系, 助教授 (40191738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧 雅之 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (60263985)
加藤 真 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (80204494)
鈴木 和雄 東京都立大学, 理学部, 助教授 (50187712)
小野 正人 玉川大学, 農学部, 助教授 (70204253)
大串 隆之 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (10203746)
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Keywords | サクラソウ / 生物間相互作用 / 送粉昆虫 / 食害昆虫 / トラマルハナバチ / 分断孤立化 / 保全 |
Research Abstract |
本研究では北海道南部低地の代表的な森林植生であるカシワ林の林床植物であるサクラソウとそのポリネータであるエゾトラマルハナバチほかのマルハナバチおよび花を食害する数種の昆虫をモデル系としてとりあげ、生物間相互作用が植物と昆虫の繁殖および個体群の維持におよぼす影響を研究した。また、病害微生物であるクロホ病菌がサクラソウの繁殖におよぼす影響をあわせて検討した。カシワ林の残存林とその周辺の約20のサクラソウ個体群を対象に、花の時期に爪痕で評価したポリネータの利用性、花の食害・病害、結実期には種子生産と果実・種子の食害や病害を調べて、それらパラメータの間の関係を分析した。2年目の調査の結果、生物間相互作用には、その年の気象条件に応じた大きな年変動が認められることが明らかにされた。特にサクラソウ個体群にとってのポリネータ利用性には顕著な年変動が認められ、花期が遅れた年には全般的にポリネータ利用性が向上することが示された。そのような変動性にもかかわらず、生物間相互作用がサクラソウの種子生産に大きな影響をおよぼすことはいずれの調査年にも認められた。 一方で、生物間相互作用が生物群集形成に果たす役割を具体的に明らかにし、その知見を生物多様性の保全に活かすことができる可能性が示された。
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[Publications] Washitani I.et al.: "Aster kantoensis KITAM,an endanoered flood plain endemic plantin Japan its ability to form persistent soil seed banks" Biological Conservation. 82. 67-72 (1997)
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[Publications] Oshima,K.et al.: "Spatial and seasonal patterns of microsite light availability in the conservation of Arisaema heterophyllum, a threatened plant species" Journal of Plant Research. 110. 321-327 (1997)
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[Publications] Muraoka,H.et al.: "Combined effects of light and water availability on photosynthesis and growth of Arisaema heterophyllum in the forest understory and open site" Oecologia. 112. 26-34 (1997)
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[Publications] Araki,S.et al.: "An experimental device for studying aeed responses to naturally fluctuating temperature of surface soil under a constant water table" Functional Ecology. (印刷中). (1998)
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[Publications] 鷲谷いづみ: "サクラソウとトラマルハナバチ-植物保全のためのポリネーターセラピーに向けた" ミツバチ科学. 18. 129-136 (1997)
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[Publications] 鷲谷いづみ: "保全生態学と個体群動態-種子植物の場合" 日本生態学会誌. 47. 185-187 (1997)
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[Publications] 鷲谷いづみ ほか: "マルハナバチハンドブック" 文-総合出版, 50 (1997)
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[Publications] 鷲谷いづみ: "サクラソウの目-保全生態学とは何か" 地人書館, 240 (1998)