1998 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児突然死症候群(SIDS)の法医病理学的診断基準の作成
Project/Area Number |
08307006
|
Research Institution | The Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
高津 光洋 東京慈恵会医科大学, 慈恵医大医学部・法医学, 教授 (60010089)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 尚文 秋田大, 医学部・法医学, 教授 (80108935)
前田 均 大阪市大, 医学部・法医学, 教授 (20135049)
中園 一郎 長崎大, 医学部・法医学, 教授 (30108287)
倉田 毅 国立感染症研究所, 感染病理部, 部長 (50012779)
三澤 章吾 筑波大, 社会医学系・法医学, 教授 (50086534)
|
Keywords | 乳幼児突然死症候群 / SIDS / 法医病理学 / 診断基準 / うつ伏せ寝 / 急性窒息 / 判例収集 / ウイルス肺炎 |
Research Abstract |
乳幼児突然死症候群(以下SIDS)は乳幼児突然死の中から、国際的定義(もとより剖検診断、除外診断である)に準拠して厳密に診断されなければならない。しかしながら、わが国では必ずしも厳密に診断されてはおらず、中には解剖されずに、安易にSIDSと診断されている症例が少なくない。そこでSIDSの剖検診断の現状を把握することを目的として、全国の法医学教室及び監察医務機関に対し、乳幼児突然死剖検例について生前の健康状態、既往歴、死亡時の状況、剖検診断、剖検所見等のアンケート調査を行った。その結果31機関から307例について回答があり、このうちSIDSの剖検診断率は約40%であった。対象をSIDS群と非SIDS群とに大別し、各項目について対比分析したところ、SIDS群では死亡時の体位がうつぶせ寝であったものが61.5%を占めており、非SIDS群での45.9%を大きく上回った。また、死因の判定やSIDSと急性窒息死との鑑別に重要な生前の健康状態や死亡時の状況等について十分な分析をせず、剖検所見のみからSIDSと診断されている症例が目立った。乳幼児突然死、特にSIDS関連事例に関する判例の収集・分析を行ったところ、SIDSは死因が実証されていないと受け取られ、証拠不十分による免責理由とされる傾向が明らかであった。基礎的研究として脳、肺、肝の病理学的、免疫組織化学的分析を行った。 さらに地方における乳幼児突然死例の取り扱いの実態を知るために、秋田県を対象にした調査を行ったところ、乳幼児突然死が異状死として届け出されていなかったり、解剖されることなくSIDSと診断されているものが少なくなかった。これらの結果を参考に、法医病理学的にSIDSと診断するためのminimum requirementsを提示した。
|
-
[Publications] Maeda H: "Evaluation of postmortem oxymetry with reference to the cause of death." Forensic Sci Int. 87. 201-210 (1997)
-
[Publications] 三澤章吾他: "乳幼児突然死症候群におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド含有肺神経内分泌細胞の分布の免疫組織化学的検討" 日本法医学雑誌. 52. 27-36 (1998)
-
[Publications] 栗原克由他: "乳幼児突然死症候群における肝脂肪化の診断学的意義" 北里医学. 28. 484-493 (1998)
-
[Publications] 中園一郎他: "乳幼児脳におけるフェリチン,トランスフェリンの免疫組織化学的検討" 法医病理. 4. 77-78 (1998)
-
[Publications] 吉岡尚文他: "剖検によりARVDが突然死の原因と考えられた1例" 法医病理. 3. 20-26 (1997)
-
[Publications] 西克治他: "ヒト脳組織内の糖鎖構造物理" 法医病理. 4. 79-84 (1998)