1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08401015
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Research Institution | The Middle Eastern Culture Center in Japan |
Principal Investigator |
川床 睦夫 (財)中近東文化センター, 学術局, 主任研究員 (00260141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手塚 直樹 鎌倉考古学研究所, 所長
真道 洋子 (財)中近東文化センター, 学術局, 研究員 (50260146)
高橋 忠久 (財)中近東文化センター, 学術局, 研究員 (20260143)
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Keywords | フスタート / イスラーム都市 / 都市生活文化 / イスラーム物質文化 / 飲料水 / フィルター / 中国陶磁器 / イスラーム陶器 |
Research Abstract |
本研究は、1912年以来、イラクのサーマッラ-とともにイスラーム考古学の指標的遺跡として、世界第一級遺跡の扱いを受け、世界中に数多くの遺物を提供してきたエジプトのフスタート遺跡の出土品を総合的に研究することを目的としている。 本年度は飲料水用小壺の首都に固定されたフィルターと称される透かし彫りの施された粘土製円板を集中的に調査研究した。すでに報告した通り、考古庁がフスタートの倉庫に保管するフィルターは1万5千点ほどであるが、1910年代以降、多数のフィルターが国内外に持ち去られたことが知られている。本研究では、成果として刊行予定のカタログを、通常のカタログとは異なり、数量的検討も加える予定であるので、考古庁のフスタート倉庫以外にあるフィルターも対象として調査してきた。そこで、本年度はカイロのイスラーム芸術博物館に所蔵されている約1800点、スイスの個人コレクターが所蔵する約650点の調査を手がけるとともに、エジプト国内の個人コレクターの調査も行った。このような調査の結果、約2万点のフィルターのデータがほぼ記録され、製作技法、文様の施文技法が明らかにされた。 また、都市の水を研究するにあたって、見逃すことのできないフスタートの給水事情の一端を実証的に示す遺構が考古庁の発掘によって発見され、この遺構の実測作業を実施した。さらに紅海沿岸の新発見の港市ラ-ヤ遺跡(フィルターの最盛期ファーティマ朝時代に属する全く未撹乱の第一級遺跡)では、近くにあるトゥール遺跡同様にフィルターがほとんど出土しないことを確認した。ナイル川流域と湧水アインに頼る乾燥地域シナイ半島の水利用の実態の相違が明らかになりつつある。 今後は、アラブ圏のフィルターを若干加えて、まとめのカタログ作成に入る予定である。
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[Publications] 高橋忠久: "中近東における大皿-オスマン朝期を中心として" 「大皿の時代-宴の器」展カタログ. 139-143 (1998)
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[Publications] 真道洋子: "Islamic Glass Bracelets found in the Red Sea Region" Annales du 13e congres de l′association internationale pour l′histoire du verre,1996,Lochen. 269-276 (1997)
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[Publications] 川床睦夫: "エジプト・シナイ半島の港湾遺跡 トウ-ル遺跡の発掘調査概報 1996年度" (財)中近東文化センター, 104 (1997)