1997 Fiscal Year Annual Research Report
歴史と終末をめぐる哲学の諸問題への現象学的言語論的アプローチ
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08451002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柏原 啓一 東北大学, 文学部, 教授 (30008635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 隆史 東北大学, 文学部, 教授 (40137758)
熊野 純彦 東北大学, 文学部, 助教授 (00192568)
清水 哲郎 東北大学, 文学部, 教授 (70117711)
野家 啓一 東北大学, 文学部, 教授 (40103220)
篠 憲二 東北大学, 文学部, 教授 (20086119)
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Keywords | 歴史 / 終末 / 物語 / 死 / ターミナル・ケア / 他者 / 社会主義 / ナラトロジー |
Research Abstract |
1.分担者は各自のテーマに沿った研究を進め、その成果の集約と吟味のため、研究会を5回開催し、ディスカッションを行った。今年度から新たに川本氏外2名の参加を得たため、研究が深まり、かつすでに公表された研究成果についての共同討議を、外部の研究者の協力を得て行うなど、より深い討論ができた。その内容は以下の通り。 第1回 川本隆史『ロルーズ:正義の原理』について、歴史と終末の問題から討議 第2回 清水哲郎『医療現場に臨む哲学』について、人生の終末期の問題を討議(特別ゲストコメンテ-タ:高橋久一郎千葉大助教授 第3回 野家啓一『物語の哲学』をめぐり、物語・歴史・科学をテーマとして討議(特別ゲストコメンテ-タ:中野敏男東京外国語大学外国語学部教授、苅部直東京大学法学部教授) 第4回 「レヴィナスにおける歴史と終末の問題」熊野純彦 第5回 「自然の現象学」篠憲二 2.本年は、第一年目の成果に加えて、社会的な視点からの問題へのアプローチを深めることができた。すなわち、歴史理解、終末理解は、現実の社会の中に生きている人間が自己の置かれた状況を把握する仕方である以上、自己の状況が反映したものである。歴史を語るという仕方で現在の自己を語り、現在の自己の行く末の理解を終末を語るという仕方で表現している。そこから、現実の社会主義の問題、自己と他者の問題等が、目下のテーマとつながってくる構造を分析することができた。また歴史と終末の問題は、個人史という観点からいえば、現に死に直面した者が自己の生をどのように理解するかという問題として現れる様子を分析することができた。 3.第一年目の発表のうち2点は、その後推敲を重ねてほぼ完成し、10年度中に岩波のシリーズ「新・哲学講義」の第8巻に収められて公刊されることになっている。また第5回目分は現在印刷中である。また、各分担者は、機械に応じて他大学、他分野の研究者の前でこの課題に関わる発表をし、ディスカッションを通して考察を深めている。
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[Publications] 野家啓一: "生と死のアクチェアリティ" 木村敏『からだ・こころ・生命』. 71-84 (1997)
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[Publications] 野家啓一: "<私>という物語" 『情況』. 3月号. 48-55 (1997)
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[Publications] 熊野純彦: "所有することのかなたへ-レヴィナスにおけるもうひとつの<倫理>をめぐって(上)(下)" 『思想』. 874-875. 141-177, 67-105 (1997)
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[Publications] 熊野純彦: "共同存在の時間性-和辻倫理学の規範的主張をめぐって" 東北大学哲学研究会『思索』. 30. 1-24 (1997)
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[Publications] 川本隆史: "「老いと死の倫理-ある小児科医の思索を手がかりに」" 河合隼雄・鶴見俊輔『倫理と道徳』<現代日本文化論9>. 127-148 (1997)
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[Publications] 清水哲郎: "ロゴスの遍歴" 岩波 新・哲学講義(1)『ロゴスの死と再生』. 3-67 (1998)
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[Publications] 川本隆史: "ロールズ:正義の原理" 講談社, 310 (1997)
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[Publications] 清水哲郎: "医療現場に臨む哲学" 勁草書房, 238+8 (1997)