1998 Fiscal Year Annual Research Report
地方都市の政治構造と住民の政治意識に関する社会学的研究
Project/Area Number |
08451037
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
内藤 辰美 山形大学, 農学部, 教授 (00064098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小浜 ふみ子 愛知大学, 教養部, 専任講師 (20288426)
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Keywords | 多選首長都市 / あがすけ / 市民文化 / 派閥 / 無尽 |
Research Abstract |
本年度は、山形県山形市、山梨県富士吉田市、岡山県備前市を対象に、政治構造と市民文化に関する調査を聞き取り調査に重点をおいて実施した。本年度の調査で聞き取りを重点にしたのはこれまでに実施した標準化調査(量的観察)では十分に把握することができない質的側面を把握する必要に基づいている。得られた結果は以下の通りである。 山形市は全国的にみて有数の多選首長都市である。多選にその具体的一例をみる山形市の政治構造は「あがすけ」を否定的にみる山形の市民文化と密接に関連する。横並びの発想を重視し革新に抵抗を示す山形市民の意識と「あがすけ」否定の行動様式は山形市民の市民文化である。そして「あがすけ」を否定的にみる山形の市民文化の根底には直系家族の形態や位階序列を重視する市民意識が存在する。 富士吉田市は山形市とは対照的に多選阻止の政治構造を特徴とする都市である。富士吉田の市民文化は派閥と無尽に代表される。富士吉田市における派閥政治はこの都市の市民を二分させ、政治を日常生活の一部に組み入れている。無尽は経済的、政治的、文化的な機能をもつ「集まり」である。無尽という集まりは富士吉田市民の生活の潤いを与えている。富士吉田市における派閥政治と無尽との間に直接的な関係はない。しかし、富士吉田市の派閥政治を支えている一因に無尽という集まりの場があることは明らかである。富士吉田市における派閥政治はひたすらローカルなものへの関心に基づいており、無尽はローカルなものへの関心を強化する機能を担っている。 政治構造と市民文化とが密接に関連しているという点で二つの都市は共通する性格を有している。おそらくそのことは二つの都市に限らない。二つの都市の事例は日本における地方都市の政治構造の解明に市民文化の視点が必要であることを示唆している。
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