1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08452012
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小林 誠 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60257813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南野 泰義 立命館大学, 国際関係学部, 助教授 (60268141)
朝日 稔 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (50034872)
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Keywords | 国際 / 政治 / 経済 / 覇権 / 国家 / 多国籍企業 / レジーム / グローバリゼーション |
Research Abstract |
独自の国際政治経済学の探求という視点で進めてきた当研究プロジェクトも、1998年度は3年目の最終年度になる。これまでの成果をとりまとめるとともに、新たな研究の発展の方向を探る作業を行った。 重要な論点として出されたのは、国家の衰退と非国家アクターの台頭という問題である。スーザン・ストレンジの『国家の後退』(岩波書店、1998年)を素材の一つとして詳しい検討を経たうえで、以下のような知見が得られた。第一に、争点領域によっては国家権力が後退し、非国家アクター(たとえば多国籍企業)が権力を持つようになったり(たとえば保険や金融)、あるい国家権力が最初から及んでいない争点領域で非国家アクターが台頭しつつある(たとえばサイバースペース)。第二に、それでも国家の全般的な衰退を肯定することはできない。国家の枠組みを残したまま、非国家アクターの台頭が進んでいるからである。また逆に、リンダ・ワイスの主張するようにグローバリゼーションで国家の権力が高まったり、アラン・ミルワードの言うように地域統合を通じて国家の再生がはかられることもあるからである。第三に、国家が集中的に持つと考えられてきた権力の性質そのものが変化する可能性を考慮すべきである。だがソフト・パワーとハード・パワーというジョセフ・ナイの分類は、分類の基準に整合性がないし、応用力の高い概念とも思われない。他方、関係的権力と構造的権力というストレンジの分類はそうした権力観の見直しの一つの方法である。ヘゲモニー概念の展開も、こうした権力概念の再構成から導かれるだろう。
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