1997 Fiscal Year Annual Research Report
遠隔測定による水圏生物の環境履歴と回遊経路の解析に関する研究
Project/Area Number |
08456097
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
坂本 亘 京都大学, 農学研究科, 教授 (50013587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 亮秀 京都大学, 農学研究科, 助手 (80263127)
荒井 修亮 京都大学, 農学研究科, 助手 (20252497)
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Keywords | 耳石 / 微量元素分析 / バイオテレメトリー / マイクロデータロガー |
Research Abstract |
平成8年度には,耳石などを中心とした硬組織内微量元素分析による,個体が経験した環境履歴について解析を行った.また,平成9年度にはこの実験と平行して,マイクロデータロガによる魚類の行動解析も試みた.最初の段階では,耳石に含まれる微量元素濃度のレベルが分からなかったため,高性能の分析機(PIXE)を用いた.その結果,環境履歴を解析する際に注目する元素として,Srが適当であるとの結果を得た.さらに遠隔測定解析の対象魚種としては,淡水域と海水域とで生活を行うサケ・マス類がSr濃度変化に急激な相違が見い出せるため,適当であることがわかった.サクラマスについて,いつ淡水域から海洋にくだり,さらに再び産卵のため河川にもどるのかを推定することが可能となった.実験は平成8年度には富山県神通川で,また平成9年度には神通川と同時に,青森県老部川に帰る個体についても解析を試みた.これらの研究と同時に,サケ・マスが母川を識別する機構を推定するため,水深と水温が記録できるマイクロデータロガを,母川回帰したサクラマスに装着し,再度海洋に放流して回収を試みたが失敗した.マイクロデータロガによる魚類の回遊行動は,イナダを用いて行った実験により成功した.これは10月から11月に相模湾で行ったものであり,総計12個体から2ないし3ヵ月間,5分あるいは20分間隔で資料を得ることができた.これらの成果はいくつかの学会誌に報告し,成果の一部として取りまとめた.また,平成9年度には安定同位体比による,食物連鎖網を通してみた環境履歴解析も試み,個体群識別が可能なことを見い出した.これらの研究は新たな展開が期待されるため,さらに平成10年度科学研究費として申請を行った.
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[Publications] 荒井修亮・坂本 亘: "マダイ稚魚期の飼育水温と鱗の隆起線形成との関係" 日本水産学会誌. 62. 213-216 (1996)
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[Publications] 池田壌・坂本亘・荒井修亮: "Arsenic deposition in the statolith of post-spawning Japanese Common swid,So-Called "Kawa-ika"." Fisheries Science. 63. 325-326 (1997)
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[Publications] 坂本亘・荒井修亮: "耳石が語る魚類の生育環境" 化学と生物. 35. 734-737 (1997)