Research Abstract |
マウス皮膚損傷の治癒過程における炎症性サイトカイン(Interleukin-1β(IL-1β),-6(IL-6),Tumor Necrosis Factor-α(TNFα))及び抑制性サイトカイン(Interleukin-10(IL-10))の各mRNAの動態について検討した. 材料と方法:8週齢雄性マウスをネンブタール(5μg/g)で麻酔し,背部に長さ2cm,深さ1mmの切創を作成した.切創作成後,1,3,6,12,24,48,72,144及び240時間目にマウスを頚椎脱臼で屠殺し、損傷部皮膚組織から,まず総RNAを抽出した.続いて抽出した総RNAを試料として,RT-PCR法でIL-1β,IL-6,IL-10,TNFα,及び内部標準として用いたβ-actin遺伝子の各mRNA由来のcDNAを増幅した.これらの増幅産物を2%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイド染色した後,画像解析ソフト(NIH Image)を用いて各サイトカインとβ-actinのバンド強度の比を算出することにより、各サイトカインのmRNAを半定量した. 成績及び考察:IL-6及びIL-10のmRNAは受傷後早期から急激増加し,IL-10のmRNAは受傷後1時間で,IL-6のmRNAは6時間でピークに達した.その後,IL-6及びIL-10のmRNAはともに減少したが、IL-10のmRNAのみ受傷後24〜144時間の間で再び,ゆるやかな増加に転じ、いわゆるリバウンド現象が観察された.その他のIL-1β及びTNFαのmRNAは,IL-6及びIL-10のmRNAよりもやや遅れて上昇し始め,いずれも受傷後72時間でピークに達した.我々はこれまで,皮膚損傷の治癒過程における各サイトカイン動態の経時的変化を蛋白質レベルで検索し,これらサイトカインが創傷治癒と密接に関係していることを報告してきた.したがって、本研究における各サイトカインのmRNAの動態は,これらサイトカインが損傷部局所で新たに産生され、いわゆるサイトカインネットワークが形成されていることを示唆している.また法医病理学的にみても,これらサイトカインの産生は,損傷局所の分子レベルでの生活反応に相当するものであり、特に皮膚損傷の受傷後経過時間判定のための有用な指標となりうるのもである. 現在,RNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーション法によって,これら各サイトカインmRNAの組織・細胞レベルでの局在を検索中で、特にIL-1βmRNAについては,炎症細胞内局在についての良好な成績が得られつつあり,平成10年度においても鋭意,継続して研究する予定である.
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