Research Abstract |
二酸化炭素のオンサイト測定システム開発,大気-海洋間CO_2分配平衡解析の研究を進めた. 1.オンサイト測定に用いる検出反応系の開発研究 CO_2ガス透過/吸光光度法に用いる新規検出試薬の合成・開発を行った.本研究の最終目的であるオンサト高感度測定を目的とし,化学的に安定な発色試薬開発を目指した.試薬の具備すべき主要性能は,(a)試薬の酸型と解離型の光吸収波長が十分に離れている,(b)酸型の光吸収が発光ダイオード(LED)の波長近傍に存在し,モル吸光係数が大きい,(c)水溶性であり,その水溶液が化学的に安定,(d)酸解離定数(pKa)が9付近,である.これらの条件を充たす試薬として,ニトロフェニルアゾナフトールスルホン酸系の新規試薬10種を合成し,性能評価を行なった.その結果,目的に十分合致する試薬,4-(2,4-ジニトロフェニルアゾ)-1-ナフトール-5-スルホン酸(吸収極大波長:λ_<HR>=454nm,λ_R=618nm;pKa=8.95),を見いだした.本試薬を含むpH10の溶液が450nmLED光源によるCO_2検出試薬系として極めて優れている. 2.オンサイト測定装置開発と大気中および海水中の二酸化炭素(CO_2)の精密測定 フローインジェクション方式(FIA)に基づくオンサイト精密測定装置構築のために,バッテリ-駆動方式,LED光源,パソコンデータ保存方式ポ-タブルFIA装置(PFA:縦16cm,横16cm,奥行き32cm,重量8kg)を完成させ,新たに設計・製作した高効率,長時間ガス透過が可能な新規透過装置を装着した.本測定装置により目的現場で,海水,河川水,雨水などの微量-多量CO_2の測定が初めて可能となった.CO_2検出下限は1x10^<-5>Mである.海水中の総炭酸の精密測定では,試料注入後2分以内で結果が得られる.大気(20ml)中のCO_2は吸収液(2ml)に吸収させた後,本装置で簡単迅速に定量できる. 3.海水,大気双方のCO_2のオンサイト同時測定が可能となったことにより,正確な分配平衡測定が初めて可能となった.本測定法・測定装置は小型・軽量に加え,持ち運び容易な利点を生かし,実際の船上での海洋観測実験使用の予定となった.
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