1998 Fiscal Year Annual Research Report
生態学的視点による動物とヒトの「認知的」行動における生理心理学的機構
Project/Area Number |
08610070
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
岩本 隆茂 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (10000605)
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Keywords | 生態学的視点 / 「認知的」課題 / 認知行動療法 / 時間割引率法 / 認知的ストレス / ストレス対処法 / バイオフィードバック / Feature-positive effects |
Research Abstract |
本年度は本研究「生態学的視点による動物とヒトの認知的行動における生理心理学的研究」の最終年度であり、以下のような多くの知見を得た。 1. 「ヒトにおける時間割引率の認知的研究と動物実験における結果との比較」 健常な大学生を被験体とし、実際に受け取る金額の時間経過の長短と、その時の金額の割引率について、質問紙法を用いてデータが収集された。動物やヒトにおける時間経過の認知については、これまで多くの方法で研究が進められてきているが、われわれの創案した“時間割引率法"による測定は、現実に被験者が申告した金額を実際に支払うために、きわめて現実的でかつ精度も高く、方法論的には動物実験とも比肩できた。この研究は、日本行動科学学会の機関誌である「行動科学」(1998、36、33-46)に掲載された。 2. 「ヒトの認知的ストレス事態における対処方略と人格特性」 健常な大学生を被験体として、認知的課題の遂行を負荷させながら、脳波、皮膚電気反射(GSR)、指先容積脈波筋電位、心拍数などの生理心理学的測度がモニターされ、被験者にバイオフィードバックされた。認知的課題の遂行方略と人格特性の関係に、いくつかの重要な知見を得た。本研究の成果は、1998年の日本心理学会で発表され、多くの関心を集めた。 3. 「行動療法における“認知的"視点の導入」 最近、「認知療法」や「認知行動療法」が盛んになってきているが、その内容はきわめて多岐にわたっている。岩本らはこれらの内容についての理論的解析を深めることによって、これらの用法は、問題行動における“認知的"機能を重視はするが、その本質はいずれも広義の行動療法であることを、『認知行動療法の理論と実際』(岩本他編著:培風館、1997)と『認知行動療法ー臨床と研究の発展ー』(坂野・岩本監訳:金子書房、1998)において解明した。 4. 「動物とヒトにおけるFeature-positive effectsの研究」 動物やヒトにおいて、ある反応が強化される可能性がある試行に対しては外部刺激を随伴提示させるが、強化の可能性がない場合にはその外部刺激を提示させないという訓練手続きは、どちらの場合にも外部刺激を提示しない場合に比べて、弁別学習を促進させることが知られており、「feature-positive effects」FPE)として知られている。岩本らはラットを被験体として、FPEについてはこれまで研究が行われていない時間弁別学習事態にこの訓練手続きを導入し顕著なFPEを見いだした。この研究は1998年度の国際行動分析学会において発表され多くの関心を集めた。
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[Publications] 森 伸幸・岩本隆茂: "慢性疾患患者のセルフケア行動に関する要因." 北海道心理学研究. 20. 73-80 (1997)
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[Publications] Iwamoto,T. & Wada.H.: "Conjoint effects of internal and external stimuli on temporal discrimination learning in the rat." Journal of Nursing & Social Services. 5. 19-28 (1998)
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[Publications] 森伸幸・岩本隆茂: "動物療法の概要" 北海道医療大学看護福祉学部紀要. 5. 65-73 (1998)
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[Publications] Iwamoto,T.: "Feature-positive effects of internal and external stimuli on temporal discrimination learning in rats." Proceedings of the 24th Convention of ABA. 24. 112 (1998)
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[Publications] 岩本隆茂・森伸幸: "バイオフィードバック訓練のストレス対処に及ぼす影響" 日本心理学会第62回大会発表論文集. 62. 953 (1998)
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[Publications] 石川由貴恵・岩本隆茂: "推論過程における反応時間と性格特徴" 日本心理学会第62回大会発表論文集. 62. 905 (1998)
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[Publications] 坂野雄二・岩本隆茂(監訳): "認知行動療法-臨床と研究の発展-" 金子書房, 217 (1998)