1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610381
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野 善彦 東北大学, 文学部, 助教授 (90142885)
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Keywords | 領邦君主 / 教会支配権 / 帝国教会 / 教会と国家 / コンコルダート |
Research Abstract |
本年度は,「帝国教会」とカトリック領邦(バイエルン)との諸関係・紛争を中心に研究を進め,次の成果を得た。 西欧諸国においては15世紀の所謂「公会議時代」以降顕著となる「国家教会制」への傾向がとりわけ宗教革命期を経て一層強化される。16世紀以後連邦制的国制をとるドイツにおいても領邦のレベルで新教か旧教かを問わず国家による教会支配が協力に進展する。こうした趨勢を受けて1555年のアウグスブルクの宗教和議は領邦君主の「宗派選択権」を帝国法的に確認したが,教会と国家との関係について,ルター派の領邦君主に「領邦の最高の司教」たる地位を認めその領邦をカトリックの教会組織から解放したのに対し,カトリックの連邦については教会と国家との関係を未決定のままに残した。そこでカトリックの領邦においては,以後教会支配権をde factoに推進・強化する領邦君主と領邦を所轄する複数の司教〔=帝国司教〕との間に紛争・軋轢が頻発したことから,両者の権限関係をいかに調整するかが16世紀に大きな問題となる。典型的カトリック領邦たるバイエルンにおいては,領邦君主たるバイエルン公と領邦を所轄するザルツブルク大司教及びその属司教との間で教皇大使の仲裁のもと1583年にコンコルダートが締結され,領邦における教会支配権を領邦君主と所轄司教とが分有・共同行使する体制が構築され,これが19世紀初頭までバイエルの教会と国家の関係を規定することになった。このような形で領邦君主の教会支配権に制限が設けられたことは,所轄司教〔帝国教会〕が領邦バイエルンにおけるその教会支配権を通じて領邦君主権の全き伸張・対内的主権の貫徹を阻止し続けること,さらに言えば,帝国教会の「帝国国政の補強帯」たる役割の一端を明示すものである。
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